カセットBBの本当の意味
こういうことも過去一度も日本では活字になったことがありませんが、私はカセット式のボトムブラケットというのはきわめて環境に悪いものだと思っています。世の中がカセット式だけになって、なんらかの具合でその規格が変わったら、はかりしれない数の、億の桁の自転車がスクラップになります。ボトムブラケットがないと自転車は乗れませんから。いま、現実はそういうところに着実に近付いています。...
View Article第一印象の真実
私がまだ小学生だった頃、麻布へ墓参りに行った帰りに山王スポーツへ寄りまして、プジョーのカタログをもらいました。その時、実車も見たのですが、何を感じたかはありありと思い出します。 高級車にはクイックレリーズが付いていて、それより下のモデルはウイングナット・レリーズでした(蝶ネジ)。その時、ウイングナットのほうがカッコ良い、と感じたのです。...
View Articleのどかな生活
私の机の上にはバートランド・ラッセルの写真が置いてあります。彼はアインシュタインや湯川英樹らと核兵器に反対したり生物化学兵器に反対したりしていましたが、彼の著作を読むと、世界のものや文化が画一化されることや、「経済生長を原則とした社会」にも反対していたことがわかります。...
View Article愛用と御用達
英国にいた時、その世話になっていた家のことをずいぶんまかされていました。 クリームはセインズベリで買え、肉はローカル・ブッチャーの◎×から買え、時計の調整はプットマンのところでやれ、と言う具合。 ところが、日本のある旧家の家の生活をテレビで見ていたら、大黒帳のようなものに、おおよそすべての生活のやらねばならない「頼む先」が書いてあって、ああ、英国と同じだ、と思いました。...
View Article中国製シマノ VS 日本製シマノ
フリーを整理していたところ、古い日本製シマノが出てきました。こういう『黒いしっかりしたスチール製』のフリーを見ると、私は古い人間なのでホッとします。 かたや中国製のフリー。これもシマノですが、いつもこれを手に持ち「どーしよーかなー」と思いつつ、結局部品箱のなかへ、元に戻す。私は時流に乗れない時代遅れなので。...
View Article第一印象の真実 2
これは私が中学生時代に感じたことなのですが、その当時すでに古かった国産自転車が「つくりがいいな」と感じたことでした。たしかに輸入の部品は軽く、デザインもよかったのですが、古い国産部品は「実直な、長持ちするように作られた野暮ったい質実剛健、と作り手の意地」のようなものが感じられました。 このごろは「オールジャパン」あるいは「8割ジャパン」の自転車にたいそう心惹かれます。...
View Article組み立てはデッサン
なんとか年内に6台ばかり送り出そうと思って早朝からがさごそやっているのですが、実際組み立ててみると、「ちょっとここが気になるな」というところが出てきます。そういう時は部品を調達しなおしたりする。 たとえば、ギアリングをシルバーで行くつもりが、「ここはゴールドでないといかん」と言う気になってきたりする。...
View Article単一機能の贅沢
英語だとsingle purposeと言いますが、これは深い。たとえばスポーツカーは「単一機能」なわけです。 「単一機能の自動車が普通の量産サルーンに負けるはずは無い」とか良く言います。これはたとえばライターなどにも言えて、「時計が付いたライター」などは、やはりヨーロッパの骨董市場では、単一機能の最高級品より評価がさがります。...
View Article技術料を払えない国に未来は無い
今日は夜、かつては卸もやっていた自転車店へ足りない部品を買いに行きました。 そこで彼が持ち出してきたのは、近所の安売り店のチラシ。買い物用自転車が4800円。 「こういうのが修理に来るわけさ。そこで『タイヤとチューブを前後替えてもらうといくらですか?』って訊かれるわけよ。そこで『4千円ぐらいです』って言うと、99.99%の人がやめて、安物屋で一台丸々買いかえるね。」...
View Article汝集めることなかれ
長年自転車だの骨董だのやってきましたので、私は誰かの持ち物を見たときに、ちょっと違うところを見ます。 「持たなくていいものを持っている人」と「いいところを持っているな」という人。 日曜日は先週うちにきたハブを分解して掃除しました。これはある方の収集物だったのですが、開けてみたところ、グリスが酸化した独特のニオイがしました。...
View Article太陽の無心
ここに出したものは、1960年代の『自転車のおまけ』です。 私にも記憶がありますが、自転車を買うと、こうしたメーカーが作った小雑誌、警視庁交通局が作った小雑誌、自転車産業振興協会が作った小雑誌など、4~5冊がセットできた記憶があります。 これがなかなかよくできている。これを読むと一通りの交通法規や自転車の取り扱いと整備・構造の基礎、調整法、自転車の歴史、人間工学的な理論までわかるようになっています。...
View Article英国の冬
私はけっこう寒さには強いと思っていましたが、英国の湿気のある寒さはずいぶんこたえました。 自転車でどこかへゆく、自転車を1~2時間停めておくと、雪でもないのに、サドルにまっ白く霜が積もっていました。これはケム川からくる湿気だとみんな言っていましたが、霜が積もるものだ、というのは英国へ行ってはじめて知りました。...
View Article一言の種
先週は都心へ納車に出たおり、のどが渇いたので駅前でフレッシュネスバーガーへ入ったのですが、あいにく満員。おもての椅子に座っていました。しかしまあ、選挙演説のうるさいこと。名前を連呼して、やりもしない公約(口約のほうがいいか?)を叫び、耳あたりのいい抽象的なきれいごとをならべている。 「東北大震災が起きた時、きみは政治家として何を発言し、行動してたのか?」...
View Article訃報、小径車の巨人、アレックス・モールトン博士死去
12月9日の夜8時30分、小径車のイノヴェーション、ラバーコーンおよびハイドロラスティック・サスペンションの考案で知られるアレックス・モールトン博士が亡くなられました。92歳でした。博士は生前「THE HALLで死にたい」ことを私に語っていましたが、亡くなったのは病院でした。...
View Articleアレックスにまつわる回想1
英国に入国する際、私は書類の職業欄に「バイシクル・ヒストリアン」(自転車歴史家)と「バイシクル・デザイナー」と書き込みます。そのことからも、さまざまな知られざるエピソードを書きとめておこうと思います。...
View Articleアレックスをめぐる回想3
これはアレックスがよく言っていた2つのことですが、「最終的にそれを誰がいくらで売ろうと買おうと気にしない」ということ、あともうひとつはバースやコヴェントリーの大学や学校で授業記録に残っていることですが、「最大の利益にもってゆくのがエンジニアリングとデザインの仕事だ。」というようなことを繰り返し語っています。1方で、無駄なこと、過剰なことはしない。不思議なことに世間ではアレックスのことをこの逆に考えて...
View Articleアレックスをめぐる回想5
私がはじめてアレックスのところに長期滞在したのは1998年のことでした。思い返せばその時がもっともストレスなく、楽しい時期でした。それはアレックスも同じだったようで、彼は別れ際に、 「君はスペースフレーム・モールトンの本は持っているか?」 と聞かれました。私はあまり商売がらみのスポークスマンになる気はなかったので、そのあたりの話題はだしませんでした。しかし、一応本は持ってはいました。...
View Articleアレックスをめぐる回想6
そのコラボレーション・モデルですが、アレックスは最初、それが大ヒットして、もう一度「波にのる」ことを期待していました。ところが、ほかならぬ自分の礼賛者たちがそれを潰しにかかってきた。パシュレーとの関係すらギクシャクしていました。さらなる追い討ちは、当初、そのモデルはBD-1と同じ価格で売られることをアレックスは期待していました。...
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