アレックスをめぐる回想7
1995年から2005年までの10年間は、自転車のほうは激動期でした。フレームはアルミやカーボンが流行り始め、スチールのフレームはもう時代遅れの過去のものと言っている人たちが大半を占めました。私はいくつかの理由からアルミもカーボンも徐々にしぼんでゆく、と予想していました。実際、この10年間に、私は当時の時流に逆らって200ページ以上スチールフレームの車輌を雑誌に登場させています。...
View Articleアレックスをめぐる回想8
アレックスは日本のものが非常に好きでした。食事から思想に至るまでたいへんな日本びいきだったことは記録されておいてよい。 カイセイにチューブを頼む件がうまく行って、さらにステンレスフレームの溶接がはずれたりしたとき、など、よく仁さんのところへ修理に持ち込まれていたことから、彼のところへ行ってみようという話しがでてきました。アレックスはしばし考え、...
View Articleアレックスをめぐる回想9
そのアレックスの歴史感でしたが、第二次世界大戦のことの話になりました。ドイツ嫌いのアレックスにドイツ人の親戚がいたことは、まずほとんどの人がご存じないでしょう。...
View Articleアレックスをめぐる回想10
いままでに、これも書かれたことがない話ですが、アレックスの「自転車観」は歳とともに「角がとれてきた」様子でした。また、英国に於いてすら、彼は自転車趣味の人たちからたいそう疎まれていました。 そのきっかけとなったのは、彼が用いた「classical bike,クラシカル・バイク」という用語でした。本当なら「classic...
View Articleアレックス・モールトン博士葬儀
アレックス・モールトン博士の葬儀が、19日正午よりブラッドフォード・オン・エイヴォンの聖三一教会で行われ、無事終りました。出席者はおよそ500人。人数が多いので立っている人も多く、花は親類の花のみの受付でした。トニー・ハドランド氏と甥のショーン・モールトン氏のインタヴューがBBC4で流されたということです。
View ArticleWe must live on.
この11日間は真夜中の国際電話にすっかり忙殺されました。なんだかぽっかりとした空虚感があります。なんだか何をやっても集中力が出ない。 「会うは別れの始まり」 昔、黒澤明の「7人の侍」を見たときに、「なんでつぎつぎにすごい人が死んでゆくのかな」と理不尽な感じがすごくしたのを覚えています。 しかし、いま自分が歳をとって見ると、世の中は理不尽なものだとの思いを深くします。...
View Article一辺倒
このごろはだいぶやわらぎましたが、今から35年ぐらい前は、年末はあっちでもこっちでも第九ばっかりやっていて、それ以外のコンサートを探すのが困難なほどだったものです。 それがいつしか、これはおかしい、と一部の勇気ある人たちがバッハとかマーラーをやりはじめた。 大きいコンサート会場を借りての公演となると、はずしたら大赤字になります。...
View Article職人心理
オートメーションでつくるものは原則どれも似たり寄ったりですが、それでもバラつきがあります。時計のクオーツの心臓部などでも、高いものと安いものは原則同じものだったりします。ただし出来上がった後に試験をしてみるといいのと悪いのがある。精度の高くあがったものは高いものに使う。精度の出なかったはねられたものは廉価品につかう。...
View Article天狗日乗
おおつごもりも近付く師走の雑踏の中、天膳は秋葉の原にいた。かつて江戸を日の海にした振袖火事を出した火元は、現在の佐久間町のあたりと言われている。甲午火事の火元も佐久間町であった。光なる「でうす」の宿敵の名をもってその町を呼ぶものもいた。 「なんとも面妖な気が漂うはそのゆえか?」 天膳は秋葉の原の店で軸受け鋼球を買うと、将軍が上野寛永寺に向かう「御成り通り」を歩いた。...
View Article「ふきだし」メンタリティ
マンガの人物からバルーンのようなものが出て、そのなかに喋っているセリフが書いてあるものをフキダシと言いますが、もう、ここ20年ぐらい、私はマンガの流行が人の「連続思考可能時間」を変えるだろうと言ってきました。 「知性がフキダシより長い時間の論理思考に耐えられなくなる日」が近いのかもしれません。 私がミクシイをやめたのも、そのあたりの理由が大きい。...
View ArticleVanity City
クリスマスになるとさまざまな過去のクリスマスのことを思い出します。 私がこどものころ、もみの木に飾りつけをして、そこへ電球がスズナリにつく「仕上げ」をするのが楽しみでした。...
View Article自転車屋の厳しい内幕
うちなども自転車店のおかげをこうむっているわけですが、聞くとどこも厳しい。その厳しさはおそらく通常のオフィスワーカーの想像を超えていると思います。 ひとつづつ、話を重ねてみましょう。...
View ArticleUnrestored の価値
私は古い物を見ると「一次資料」として見るので、むやみに二個イチとかはしませんが、先日みえた研究家のかたが、最近はそういう「いいとこどりの合体品」がものすごく増えてしまっている、と嘆いておられました。 なにかを動体保存しないといけない事情があってのことならまだしも、ただコンディションのいいものを所有したいというだけの情動でやってしまうのはいけないと思います。...
View Articleメカメカしいのはお好き?
今から18年ほど前、TAのプロフェッショナル・リングを使っておりました。ところがこれはインナーギアが小さいのが入らない。たしかインナーが45Tとか46Tまでしかはいらないのです。これで昔の人はピレネーでもラルプ・ディエズでも登っていたのですからたいしたものです。 「歳をとったら困るだろうな。」...
View Article自転車をまとめるということ
オレンジ色の車輌の写真ですが、一度シルバーのリングを入れてみたのですが、どうも締まらない。 ちょっとゴールドの、一ランク上のリングを付けてみました。この方はフロント・シングルで乗るので、一枚のみ。そうすると、クランク周りがややスッキリしすぎるので、存在感がもう少し欲しい。 歯数が小さいので、これでどこでもたいていのところは登れます。...
View Articleどっと疲れが
今日はまたしても大ショック。いつも行く釣餌屋・駄菓子屋が廃業されていました。昭和の30~40年代の雰囲気でラムネを飲むのがコースの定例でした。 映画やドラマのロケにも使われた名店だったのですが、ついに店じまい。残念。...
View Articleフロント変速器
私が若かった頃、「カンパのFDは競技用だから羽の巾がせまいので、チェンが当たりやすいよ」と言われていました。 チェンジを速くするのに、前の部分を斜めに曲げて巾を狭くしてあったのです。これは現代のロードレーサーを中心とする変速器では当たり前になってしまいましたが、これは古い変速器の中では「異例」のことだったのです。...
View Article多摩川の未来
「春のおがわはさらさらゆくよ♪」という歌はみなさんご存知でしょう。 その小川は代々木のあたりにあったということです。そのあたりはいまやセメントの海。 せせらぎも水面のきらめきもどじょうもふなもメダカも亀もいない。 河童が出そうな淵もない。 いまや、多摩川も年末で予算を使い切ろうと、さかんに工事をやっている。...
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