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Channel: 英国式自転車生活
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第一印象の真実

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私がまだ小学生だった頃、麻布へ墓参りに行った帰りに山王スポーツへ寄りまして、プジョーのカタログをもらいました。その時、実車も見たのですが、何を感じたかはありありと思い出します。

高級車にはクイックレリーズが付いていて、それより下のモデルはウイングナット・レリーズでした(蝶ネジ)。その時、ウイングナットのほうがカッコ良い、と感じたのです。

私はその後、自分の自転車のシートステーのさやの部分を白いエナメルで塗ったりして、フランス車に似せようとしていました。なんともカッコよく、ヨーロッパを感じさせたのはヘッドライトとテールライトでした。

思えば長い付き合いですが、ウイングナットやテールライト、ヘッドライトなどを、駄菓子屋へおもちゃを買いに行くようにZのおじいちゃんのところへ買いに行っていました。そのころはまだメーカー車を改造していたのですが、逆爪のメーカー車のエンドにウイングナットでは留まりが悪かった。逆爪用のプレスの引き金具がヨーロッパに存在することを知ったのはずっとあとのことでした。

もうギリギリと締めて、ワッシャーにヒビが入ってしまった。年中買いに行っていました。

その後、ストレート・ドロップアウトのフレームを手に入れ、シャフトもクイックレリーズにしましたが、いまだに心のどこかにウイングナットへの郷愁があります。

その時、「自転車を軽くすると走りも軽くなる」とさかんに雑誌に書いてあったので、部品を入れ替え始めた頃でした。当時はリオターのペダルが人気でしたが、どうもデザインが好きになれませんでした。「アトムのほうが重いぞ」とみんなに言われましたがアトムにした。その後リオターも買いましたが、中学生の脚力でシャフトを折ってしまい、これは粗悪だとこども心にもそう思った。本体は登り坂で踏み込むとギシギシ言う。アトムのほうがまだよかった。

しかし、シャフトを回してみると、どう考えても国産の角丸のペダルのほうが滑らかで、そこへ戻ってしまいたい気持ちもこどもながらにもあったのです。これはダイナモも同じ。フランス製に替えたところ、音も振動も激増。これはプラスチック製でしたが、何かおかしいんじゃないか?と今度はベアリング入りと言われていた別のフランス製のダイナモにしました。そうしたら暗い。

おぎくぼの有名店の親爺に「あれは暗くてダメだ」と言ったら、親爺、「ああ、あれはわざとそうなってるんだ。走ってきて、自転車を停めたとき、ライトが明るいと目が慣れるまで見えないでしょう?そこまで考えてああなってる。あえて暗くしているんです。日本の明るすぎるライトなんかは全然ダメです。」

こどもながら「詭弁だな」と思った記憶があります。盲目的な舶来信仰というのか。

そのうち、今度はアルミのヘッドランプの接触不良に悩まされました。接点修復剤を噴いても、何をやってもしばらくすると不具合が出る。

ごく初期の小学生の頃、私はその国産メーカー車を、フロント・シングルからダブルにしたのですが、これはメーカーに電話をしてどうやったらいいですか?と聞いたら、丁寧に「合う部品は外神田の◎Lで受け取れるようにしてあげます」と言われて、江戸弁のあの方のいる有名問屋さんへ行ったのです。

今のメーカーは小学生のそういう改造電話相談などにのるでしょうか?良い時代だったと思います。今ならさしづめ「音声ガイダンスにしたがって、、、、」などと誘導されて、たどり着いたと思ったら、ショップに聞いてくださいで終るのではないでしょうか。

しかし、そう考えてみると、小学校の頃から御徒町~外神田の自転車問屋へ行っていたというのは異様なことかもしれません。

そこで受け取ったのはアルミのクランクだったのですが、どうも私のメーカー車に付いていた結晶仕上げのスチールのコッタレスのほうが美しく思えました。そのため、そのスチールのコッタレス・クランクは今日にいたるまで処分せず「サビなし状態」で持っています。数年前、ある廃業する自転車屋さんの片づけを手伝ったとき、あったのです。そのクランクの新品のシャフトが二本。これは目が潤むほど感動した。

後年、そのクランクはフランスのシクロの3角断面クランクのコピーらしいことを発見したのですが、驚くべきことに、そのシャフトのうち1本は、なんとユニット・ローラー・ベアリング式でした。かつて、ストロングライトが競技選手用にニードルローラーベアリングのBBを作っていた現物を見て感心しましたが、1960年代に日本の量産メーカーがそういうものを作って製品化していたのにはびっくりしました。

私ももういい歳なので、そうした部品が散逸しないように、それら思い出の品は一台にまとめておこうと思っています。それは「修整した第一印象ではなく、すなおに第一印象のまま」作ってみようと思っています。

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