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Channel: 英国式自転車生活
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堀辰雄に敬意を表し

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堀辰雄はコクトーに心底傾倒していました。そのコクトーを三島由紀夫は「軽合金の天使」と評した(うろおぼえですが)。

堀辰雄の時代は「大正モダニズム」が昭和の戦時下へ曇ってくる真っ只中。日本のもののデザインもデコがけっこうありました。特にヨーロッパ留学組の影響で、あの時代の東京モダンはかなり本格なものであったと思います。

うちにあるもので、あの時代のもので机上を埋めてみるか、とやってみました。

私が例の映画を見たとき、「たしかにあの時代だが、でもそれは埼玉の風景だろう?川越あたりの」という気がした。

私は中学~高校の頃、堀口大学~第一書房文化にどっぷりで、写真を集め、古物を集め、残香を求めて歩き回っていたので、映画のなかの西洋館のなかや喫茶店のなかのモダン風景にはちょっと違和感があった。

ところで、堀辰雄が心酔していた堀口大学の翻訳文学の中の「飛行機に関する文章」。

「力強い車輪が下敷の横木を押し潰す。
プロペラアの風に打たれて、草の葉は20メートル後方まで激流のように見える。
ベルニスは手首の動かし方ひとつで、嵐を放したり、制御したりする。

空に向かって逆光を受けてそそり立つ発動機の蓋をぢつと眺める。
プロペラアの後ろに、夜景の景色がわななく。

風向きに逆行して、静かに走った後、彼はガソリンハンドルを自分のほうへ引き寄せる。
機体はプロペラアに呑み込まれて飛び出す。
弾力性の空気の上の最初の反動がやがて始まる。

すると初めて地面が展がり、車輪の下にベルトのように光りだす。

最初の程は感じがなかった。
ついで液体のように感じられた空気が、いまや固体化したと判断すると、
操縦士はそれにもたれかかり、それに攀じ登って行く。」

さらっと書かれていますが、さすがはサン・テグジュぺリ、自ら飛行機を飛ばしていた人にしか書けない文章だと思います。

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