ランス・アームストロングのドーピングによる記録剥奪・永久追放の話は、以下の書庫のブログに書きました。
*分かれ道の感傷 8月26日 アームストロング全タイトル剥奪
*おたくほいほい 9月13日 大事件で別冊出ず
*おたくほいほい 8月30日 アームストロング追放の背景
まあ、一度書いたので、再度書き起こすことはしませんが、上の3つの日記は、アメリカのテレビで放映された内容のサマリーです。
私は、もっと踏み込んだ調査の内容が自転車雑誌に載るのか?と心待ちにしていましたが、A誌にはまったく出ず。B誌には1ページだけ出ましたが、その内容はアームストロングは500回の検査を受けたがシロだった、USADAに記録剥奪の権限はなく、UCIにある、、と締めくくり、まるで「濡れ衣」であるかのような書きっぷりで「う~~ん」と腕組みでした。「まず結果ありき」のようでがっかりでした。誰に気がねしているのか。
アームストロングが悪名高いドーピング専門家で競技の世界から追放されたマケーレ・フェラーリ医師に2010年まで金を払い続けていたことはどうなのか?これを調べ上げたことがアームストロングの言う「選手の人権侵害」なのか?ラスベガスでは往年のチャンピオン、グレッグ・レモンとアームストロングは記者会見の席でやりあっている。そういういきさつは伝えない。レモンはアームストロングが現役選手時代にドーピング検査を管轄する団体インターナショナル・サイクリスト・ユニオンに天文学的な額の寄付をしていたことが前代未聞で不審だ、と言っています。そういうことは、やるにしても選手を辞めてからすることだというわけです。
このあたりの「レースにかかわる団体の組織編成と管轄相関図をやりなおし、分離すべきところは分離させ、独立組織として、不正が組織的にできなくするべきだ」というのがグレッグ・レモンの主張です。
今回の事件のはじまりは、メジャー・リーグのバリー・ボンズがすべてのきっかけでした。彼を調査中に、彼に薬物を供与していたBALCO社を調査中に、メダリスト陸上選手のマリオン・ジョーンズもドーピングをしていた、と社員の証言から浮かび上がった。
マリオン・ジョーンズは過去の検査結果はすべてシロでした。彼女も100の桁のドーピング検査で、一度もひっかかっていないのです。最初は否定していたものの、最終的には自白。すべての記録は剥奪されました。
そこで、「500回」の検査でシロだった」からというのはちょっと違う。ツアー・オヴ・スイスで「疑わしい」という結果が出ているにもかかわらず、それをさらに調査することが、なぜか行われませんでした。これは60ミニッツに出てきた人も証言している。その時の「疑わしい」と言う文字のある検査文書は番組中で紹介されています。
USADAは自信満々で、その背景にはチームメイトの証言だけでなく、EPO、ステロイド、ヒト成長ホルモン、自身の保存血液を入れてヘモグロビンを増量する血液ドーピング、それらがテストで出ないようにするマスキング、彼自身の検体、すべての証拠をそろえていたと言います。
USADAは期限を切って、「これらが真実でないとして異議を申し立てるか?あるいはこれらを真実として受け入れるか?」とアームストロングに通達しました。「Challenge or accept ?」にはそういう意味があります。日本語で言うような「不毛な議論はもういい」というようなニュアンスではありません。2つにひとつ。「オマエはやったかやらなかったか?」Yes か Noなのです。英米にはperjuryというのがあり、法廷で嘘をつくのはかなり重い罪になります。確実に牢屋へ入れられる。「Challengeする、私はnot guiltyだ」と言って、やっていたことが証明されてしまったら、たいへんです。マリオン・ジョーンズはそれで獄に入ったはずです。
それ以前にアームストロングは裁判所に、USADAの規則が公正な裁判を受けられるはずの競技者の人権をないがしろにしている、と人権侵害があった、との2点でドーピングの有無とかの本質的でない部分で裁判を起こし、それによってドーピングの件の裁判をその2つの裁判のあとにひき延ばそうとしていました。つまり「これは濡れ衣の魔女狩り裁判だ、とのイメージを先に盛り上げてしまおうとした」。これらは2012年7月10日と8月20日に、たてつづけに却下されています。これで裁判用語でいう「アームストロングのデイフェンスのラインは崩された」と言えます。
以上が私が海外のテレビの番組のニュースから得たおおよその概要です。
今回の問題はとてつもなく根が深い。2006年のツールの17ステージでドーピング陽性になったフロイド・ランディスもアームストロングのアシストでした。
そのフロイド・ランディスは2006年に、フランスの反ドーピング検査機関のコンピューターにハッキングしたことで、現在フランスの警察から国際指名手配になっているというからビックリです。
こういうことが、ネットで海外の情報を読まないと得られない日本というのは、なんとも情けなく、本当にやれやれという感じがします。自転車界にもどこかにトー電のようなスーパーパワーがいるのか。
「プレミア付くかも」と5枚ぐらい秘蔵していたアームストロングのポスターがあります(笑)。みんなが「いなかったことにしよう」としているので、うちでは風化させないために貼ろうかとも思います。中華料理屋の「福」の字みたいに逆さに貼ろうかとも悩むところ。
彼は私の中で、間違いなくトム・シンプソン以上の存在です。常にアームストロングを思い出せ。