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Channel: 英国式自転車生活
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旅の道具1

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いろいろな本を読んで昔のことを調べると、昔の旅はたいへんだったらしい。オデッセウスの航海は有名ですが、あれなどは、男たちがあっちこっち地中海の旅先で良い思いをして、帰ってくるのが嫌になって住み着いてしまったりして、「なんでこんなに時間がかかったのか?」という家族や妻への言い訳に、誰それは一つ目の巨人に食べられたとか、魔女に豚に変えられてしまった、とか必死にみんなで口裏を合わせて作り話をしたのではないか?と私などは深読みしてしまいます。

ヨーロッパでは馬車が登場するまでは、徒歩の旅行が原則でした。これは日本も同様で、持ってゆけるものは極端に限られている。ただ、中世ヨーロッパでは、旅人はキリストと同様に大切に扱え、とのことから、巡礼の人を含め、無料でめんどうを見たといいます。これは日本のお遍路などでも「ご接待」という風習があるので、それの西洋版と思えばわかりやすい。

いまでも馬を買うことはもちろん、飼うにはたいへんなお金がかかります。ですので、昔のヨーロッパで馬車が持てる、、、ということはただごとではありませんでした。

それを「オムニバス」、市内を走る乗合馬車というのを考案したのは、あの哲学者パスカルだったと言います。それはやがて駅馬車になり、長距離移動ができるようになる。

それまでは旅をしていると、山賊や物取りが出た。ユマ・サーマンが出ている英国版のロビン・フッドを見るとそのあたりの様子がよくわかります。また、時として領主が夜になると山賊になる場合もあったので始末が悪い。これも「2つの顔の貴婦人」という映画が、そういう領主の話を描いています。

しかし、この駅馬車も、だいたい一日に70~80kmがせいぜいだったと言います。意外に馬車は距離がのばせなかった。また揺れがひどく、高齢者やこどもには良くなかった。モーツアルトはあまりに馬車での旅行が多かったために発育不全になってしまったと言われています。リチャード・チェンバレンの出ている映画「カザノヴァ」にもこうした乗り合い馬車がよく出てきます。

道路の悪いところでは、日本のような「カゴ」。カゴはヨーロッパにもあります。英語では「セダン・チェア」。自動車のセダンとルーツは同じ語です。

馬車は持てない、乗合馬車に乗るのもお金がかかる。ですので昔は庶民はめったなことでは旅行をしませんでした。

それが一気に変わったのは、自転車がけっこうな役割を果たしたといいます。最初に前輪の大きいダルマ自転車が出来ると、それで、1週間も10日も旅行するひとたちがあらわれました。

馬車よりも安く、セダンチェアより面白く自由で、徒歩より一日で遠くへ行ける。荷物も徒歩よりも積める。自転車はごく初期から「旅の道具」だったのです。

最近の研究と発表で、最初の自転車、ドライジーネに、「たくさんの荷物が積める旅行モデル」が存在したらしいことがわかってきました。

さて、そうした自転車の旅姿を21世紀で再構築するには?これは「ライフスタイルそのものの提示」になるだろうと思うのです。

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