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Channel: 英国式自転車生活
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3つの変化

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砂浜で波打ち際を歩いていると、波が足首を洗い、波が引く時に足の下の砂がぞーっとなくなって行く。

英語だと、何かが倒れる時、『土台の下を、上のものが崩れるように、無くして行く』undermineと言いますが、ここ25年~30年の間に、はっきり変わった文化を危うくするものが3つあったというのを強く感じる。

3つすべてをひとつの記事で書くのは『濃く』なりすぎるので2つに絞る。

ひとつは『暴力的なものに対する麻痺』で、これはコンピューターゲームからアニメにいたるまで、じつに胸が悪くなるくらいの残虐なものが目に付く。これは1990年ぐらいから増えてきたHIGAI-SYAの首を切って学校の門の上に置いたり、1950~1970年ごろには想像も出来なかった凶悪なものが増えてきたのと、無関係ではないだろうと思う。

これはチャンバラというか時代劇ものを見ても、変化ははっきり出ている。

私は素浪人月影兵庫と琴姫七変化の世代だが、そのなかの立ち回りは『踊り』に近い。いかに強そうに、美しくやるか、という日本舞踊のカテゴリーといってよい。あくまでも、そこに描かれる『悪人成敗』は『お芝居』であって、たとえ悪人であっても血しぶきが飛ぶようなシーンはない。

それが大きく変化したきっかけは『子連れ狼』だったと思うが、リアルに血が出て、残虐なシーンが出てきた。それが2000年を超えた頃から、さらにエスカレートし、腕が飛んだり、首が飛んだりするのがゴム細工を使ったようなもので不必要にリアルに描かれるようになった。

これはどういうことかというと、月影兵庫や琴姫七変化では『お芝居』を観ていたのが、『リアルな残虐シーンを観ること』にすり替わっている。この変化はものすごく大きい。

時代劇を観たい人はそんなものを求めていなかったはずだ。

これは子連れ狼の北大路ヴァージョンで、火付けの男に接近するために拝一刀が牢に入るシーンがあるが、そこで、入牢したときの胸の悪くなる凄惨ないじめが不必要に延々と描かれる。『こういうものをテレビで流していたら、学校のいじめはなくならないだろう』と思った。

そもそも、子連れ狼で演じていた子役の中には、毎回凄惨な血しぶきシーンをみていて、現実の世界でそういう事件を起こしてしまった人がいた。テレビの仮想現実の中身は現実の世界へ染みだしてくる。

これは新しい実写版の『LE LOW NI KENしん』でも感じる。胸糞の悪いシーンがたくさん出てくる。あそこまで行き着く前段階に新しい方の『ZA-頭―ICHI』の不必要リアルも一役買っているだろう。

最近、ネット上である流派の伝承系図がデタラメであるといのが話題になっているが、その流派、『お辞儀をして、そのまま欺いて下から斬りあげる』というような卑怯者の技が画像アップされている。礼節のある武士が習ったものには到底見えない。

3つのうちの2つ目は、『笑い』。昔の名人の落語を聞いていると、『ああ、もう時代が変わって古いのかな、と出だしで思うが、それがじわじわと引き込まれ、笑うまいと思っていても、いつしか笑いの引き出しを開けられて笑っている』ようなところがある。こういう笑いがなくなった。

私の世代は、日曜日に『テレビ寄席』というのをやっていて、けっこうな人が見ていた。古典から新しいものまで幅が広かった。こどもでも「あいつは巧い、下手だ」とけっこう批評をしていたのを思い出す。その当時のこどもたち(東京地方の話だが)は、『体罰系の漫才』飛び蹴りをしたり、頭を叩いたり、どついたりというのはくだらないと点が辛かったものだ。

それが、いつしか20世紀が終わったころから『粋な笑いがすっかり弱まり』、『体罰系』『けなし系』ばかりになった。これもやはりいじめの温床になっていると私は感じる。ネット上でのいじめも、背後にある心理構造はきわめてそうした21世紀の笑いに似ている。

テレビをつけて、『気のふれたタヌキ憑き』みたいのが騒いでいると10秒でスイッチを消す。

昔、月影兵庫が花山大吉になったとき、『そうぞうしくて、品がなくなった』と感じ、それが天下泰平になって完全に私は見なくなったが、今見ると、それでも花山大吉まではかなり格調を感じる。

ご存じの方は懐かしさで、名前も聞いたことがない方は一度、Youtubeで観ることをお薦めします。

素浪人花山大吉「おから・ばかたれ3題」。

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