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Channel: 英国式自転車生活
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AIがつくる暗い未来

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昔、自転車の変速器で、どのギアに入っているのかわかるようなシステムが出て来た時、我々の世代は『人間をダメにするシステム』と言っていた(笑)。いまや、世の中のほぼすべての自転車の変速器は、どのギアに入っているかわかるインデックス・システムになっている。

こういう変化は,ジワジワとすすむ。自動車は1970年代までは、マニュアルが当たり前だった。『アメリカで、銀行を襲った男が駐車中のクルマで逃げようとしたら、マニュアルだったので運転できず捕まった、などと言うニュースを聞いて、なんとしまらない、間抜けな話だろうと思ったが、いまは、これは日本でも起こり得る。

気がつけば、タクシーもみんなオートマ。やがて気がつけば自動車を『運転するなどというのは、ガラケー使っているオヤジと同じような冴えないこと』とみなされるような日が来るかもしれない(笑)。

私は英語を機械式タイプライターで覚えた。覚えたい英単語はひたすらタイプライターで打った。『エフ,イー、ビー、アール、ユー、エイ、アール、ワイ、フェビュアリ』とそれこそ何百回も打った。これは他の単語も同じ。それからやがて、英語の文章をひたすら打った。暗唱したい文章を何百回もタイプライターで打った。機械式のタイプライターがそれこそガチャガチャになり、キーは鉄の細い板から外れ、何台もダメにした。

そのおかげで、今の私がある。『スマホ式のフリック入力』では『絶対に私が毎日ブログアップしている記事を私より速く書いて入力することは不可能』なはずだ。私はブラインドで打っていることだし、喋るように打ち込んでいる。考える速さで打っていますから。

ところが、最近はスマホの普及でキーボード入力が出来ない人が増えているという。

しかも、自分の手書きで文字を書かないから、なんだか『金星人のひらがな』みたいな字を書く人が増えた。この道の先はどこへゆくのだろう?私は寝る前、必ずいまだに字を書いている。やや進歩があった。もう少し早く、30代の半ばごろから始めていたらよかったのに、とよく思う。行くべき進歩の道はあまりに長く、残された時間は少ない。

ネット、スマホにどっぷりの人が多いので、人とのコミュニケーションもなんだかおかしくなっている。

2つ折り携帯からスマホになって、『電話にすぐ出ない人がものすごく増えた』。メール中心になっているのだろう。最近は名刺をもらって、住所も無ければ電話番号も書いていない人が増えた。メールアドレスだけが書いてある。だいたいそういう名刺は家に帰るまでに破いて捨てる(笑)。あと40年も50年も生きるわけでないし、そういう人との付き合いはどうでもいい。その人は、連絡を取ってくる人をふるいにかけ、自分の都合のいい人だけに返事をするつもりなのだろうが、そういう人はこちらから御免こうむる。

私はむかしから、ダイレクトメールのたぐいは読まないで破って捨てていたが(英語でフライヤーという)、メールだけの人は、どこかフライヤーに近いものを感じさせる。最近は電話会社が光回線の案内をAIに自動音声でかけさせている。080でかかってくるので、宅急便か飛脚の運転手からかなと思うと営業の電話だ。これは礼儀もヘッタクレも無い。電話によるフライヤーだ。

ところが、今日NTTから光回線の案内で電話があった。それも夜の9時半近くに。こういうのは信じられない。私の世代は、夜9時過ぎに人のうちに電話をするというのは、よほどの急用だという感じがする。

『夜9時過ぎの電話は良くない電話』、つまり誰かが危篤とか、そういう電話だと1960年代には思われていた。普通の人は電話しない。

かけてきた男は、電話会社の人間にもかかわらず『夜分おそれいります』でも『今よろしいですか?』でもなんでもない。私が出るやいなや、いきなり、料金体系の話をし始めた。

これが電話会社の社員のすることかな?と驚きを禁じ得なかった。

その料金体系の変わる話は、じつは夕方にも、別の女性が電話をしてきていた。『その話は夕方すでに聞いている』と言ったら、そのそのNTTの社員、『それではその数字を言ってみてください』と言った。おいおい、顧客のところに電話しているんだろう?NTTはいったいどういう社員教育をしているのか?

そういう人が、多分、夜の10時過ぎまで会社にいるわけだろうが、不幸な世の中だなと思う。

その男の声も、人間味がないAIのような声。コミュニケーション能力が、インターネットによって人からどんどん奪われている気がしてならない。

先週の土曜日、電車の中で、小学生ぐらいのこどもが連結器のところで遊んでいた。「危ないな」と思って写真を一枚撮った。そうしたら、今度、そのこどもが連結器の板の間に足を入れたり、頭を蛇腹の間に入れて寄り掛かっていたりしたので、大事故になると思って、「危ないから、連結器のそういうところへ足を入れたり、頭を入れたりしてはいけない。足が千切れたり大怪我の危険があるから」と注意した。黙って、親のところへ行ったが、親はスマホで一心不乱にゲームをしていた。「なに?この口うるさいオヤジ」という感じで親も無言。

ネット社会で、一人一人が、インターネット上で脳の中のひとつのニューロンのようになって、個性というのは消えて行く。ネットという網のひとつの『伝達媒体』に人間個人がすぎなくなってゆく。その一人を取り出してみると、いったい、その人に備わっている後天的に獲得した能力や熟練にはどういうものがあるのかな?と考えざるを得ない。

ひと一人がひとつの伝達媒体にすぎなくなり、なんでもAIに分析を頼み、お伺いをたてるようでは、完全にAIの奴隷、AIのシステムを維持する有機生物に過ぎなくなるのではないか?という気がする。

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