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Channel: 英国式自転車生活
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手作りVS生産

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先日、「手で作っているんですか?」とあきれ顔で言われました。そうです。手で作っています。

「手で作る」とか「手作り」というのは、私は何段階もの意味があると思う。

手でやっていても「半量産」ということがありうる。

自転車の場合、ホイールを自動ホイール組機にかけて数十秒で出来る場合もあれば、すべて手組でやる場合もある。フレームビルダーなどで、自動ホイール組機などを持っている人は世界中で誰一人としていない。

フレームに関しては「自動溶接機」というものもあります。これもロボットが作れる。

実際の話、フレームビルダーがフレームを作る場合、通常、溶接の火は一本のトーチでやる。機械ならパイプをとりかこむバーナーのようなもので、あっちこっちから同時に熱して溶接する。1本トーチでやれば、片方を熱しているときは、反対側は火が当たっていないわけで、機械のほうがある意味有利なわけです。

それであるなら、機械より良いフレームを手で作るということはどういうことなのか?ということが問題になって来る。それはマスプロメーカーで出来ないことをやっているかどうか?なわけです。

現実問題、「今日はバックフォークだけの日」とかで流れ作業でやるところもあります。我々はどういうものだか、人の仕事を見ると、誰がやったかまでだいたいわかる。中には何人もでやっているので、バックフォークの右と左とで違う人が作ったものが1台にまとまっているハンドビルトもあります。それはエンドのヤスリの入れ方が明らかに違う人の「手」なので、わかってしまったりするわけです。

私が重要だと思うのは、一人の人の意志が最初から最後まで入っていることだと思う。

それでいて、はじめて統一的なものが出来る。そこをはずすと、フロントフォークの内側がタイヤと2mmぐらいしか開いていないものができたり、リアキャリが付かないものが出来たりする。世の中を見ているとそういうのがけっこうある。

私は器用なほうではないので、複数のものを同時に進行させると混乱するほうです。しかも、なかで、エンド巾は130mmにしてくれとか、120mmにしてくれとか、逆爪にしてくれとか、いや、カンパのストレートドロップアウトでないとだめだ、ブレーキはこれを持ち込むので、これにしてくれ、とかいうことになると、まあ、1か月に4台ぐらいが一人でこなせる限界ではないかと思う。それでも、通常、ホイール組みからフレーム制作、ヤスリの仕上げ、塗装の下ごしらえ、キャリアを真っ直ぐなチューブから作り、泥除けに穴をあけ、あるいは穴をふさぎ、部品の調達、梱包までのすべてを、1台に1週間というのはかなり現実的に難しい。そのペースでやっとひと月4台ですから。

フレームサイズの大きいものに、ボトムブラケット部分にバイラミネィティングをしようとしています。普通はそれほど厚みのない鉄板に型紙を当て、それをドリルで穴をあけ、その穴をつないでヤスリをかけて、丸めてかぶせる。

私はこれは気休めだな、と思う。熱をかけて、普通の、やや炭素が多いくらいの鉄板では乗り味に差があまり出ない。この手の飾り板補強はへチンズやぺトレル、クロード・バトラーでさんざん乗って体験済。

あれはむしろ装飾だと思う。

そこでいままで、うちはロウを盛ったりしたのですが、これははっきり乗って乗り味としてわかる。しかし、BBまわりはたいへんヤスリがかけづらい。ロウを盛るのもかなり熱をかける。フランスにはきわめて細いそういうところに使えるベルトサンダーがあった。今は手にはいらない。

アレックスの館づくりの「灯台モデル」はBBまわりをうまくヤスリで仕上げられないので、職人がたいそう苦しんでいた。ロウは固まるとヤスリ掛けがなみたいではない。

ならば、精度の良いクロモリのスリーブをつくり、それをテーパーに仕上げて、それをバイラミネィティングにすれば良いではないかと考えてやっている。チューブとの隙間をいろいろ工夫して、たちどころに反対側までロウがまわる。溶接時間が短くて済む。

それを今度は一つのチューブとして使うと、BBのシェルとシートの接合部分の質量差が少なく、溶接がここもうまくゆく。

しかし、こういう部品を作り、それをまた手でカットして形を整えるのですから、たいへんな手間です。

いいかげん、集中力が切れるので、休憩中に重量運搬車のレストアを気分転換にやったりする。こっちもなんとかなりそう。ちょうど100年ほど前のフレーム。フレームから前カゴの枠が出る。シートの集合部分もDセクションのチューブを使ったりして巧くできています。

台風の豪雨も関係なく、ひたすらヤスる。台風一過の晴天も関係なく、ひたすら作る。

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