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Channel: 英国式自転車生活
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「いいなり」が偉いのか?

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どうもこのところ、『悪い雑誌』に影響されて、『オーダーすれば何でもこちらの言うとおりに出来る!ボクだけのクルマ!!!』と180度勘違いしている人を多く見かけます。

それは既存のものを、『自分の眼力のほうが上だからもっと良いものが作れる』、と、かなり舞い上がった思い上がりが背景にあるのではないか。

本当にそれが出来る人は一握り。

たとえば、フェラーリを四ツ丘とかに持ち込んで、『このヘッドライトをランボルギーニのイオータのモノみたいにして欲しい』と言えば、大金さえかければ、出来なくはないでしょう。しかし、それはフェラーリでもなければ、ランボルギーニでもない。四ツ丘ですらない。

『じゃあ、V12の分解や整備はご自分で、、、。』と私ならあとで言う(爆)。中古になっても売れないでしょう。

ところが自転車の世界では、ここ25年ほどそういうことがまかり通っていた。名門の新品注文車両を買って、フロントフォークだけを日本で作り直して合体させたりする。それは作った人に失礼だ。それを合体させた日本側のフロントフォークを作った人は他人の仕事に敬意を払わないのか?私ならそういう改造は受けない。

誰か有名な画家に『こういう絵を描いてください』と注文して、それを別の画家のところへもっていって、『ここをこういう風に描きなおしてください』などという例は美術界ではない。画家ならそういう仕事は他人の仕事を冒涜することになると考える。

このあいだ納車した方が、最初に『R&Fさんが乗っているのと同じにしてほしい』と言ってきて、その通りにしたのですが、

『自分の持っているパニアバッグと幅が合わないので、幅の細いものと交換するか作り直してほしい』
と言ってきました。それはずいぶん本末転倒な話だなと思う。

私はパニアバッグは古いキャラダイス、ブルックス、1960~1970年代の国産品を使っています。あとはモーターサイクル用の革のパニア。こういうものは、想定リアキャリアの幅が広い。

それはなぜか?というと、細くするとパニアバッグの内側が泥で汚れる。だからスウェーデン陸軍の自転車用バッグもタイやに向き合う内側はビニールになっている。

私の幅広リアキャリアは、そういう古いバッグであっても、スウェーデン陸軍の自転車用パニアバッグでも付きます。1970年代のキャンピング車用のサイドバッグでも両脇に付けられるようになっている。

一方、幅の狭いパニアバッグは、中台製のクロスバイク用の汎用キャリアを想定している。そういうキャリアにはそうしたかつての日本製の名門やキャラダイスの古いものを付けるときわめてだらしなく見える。

さらに、私は革のブリーフケースや籐のピクニックカバンを使うので、幅の無いリアキャリアでは上手くつかない。天板の上で踊ってしまう。

これは作ってみるとわかることですが、『眼見当で、フリーハンドで、ねじれていない、しかも矩形がきちんと出たキャリアの天板を作るのは上手くゆかない。

うちは瑠根・得瑠諏が使っていたのとまったく同じ治具で平面を見ている。これはT先生がむこうで見せてもらって日本で写しを作ったものなので、日本でキャリアを手製している他の2つの工房のところも同じものを使っているはず。

『幅を変える』ということになると、この治具をつくることになります。アールも変わるからパイプをつぶさずに曲げるベンダーも作り変える。

そうしてできたキャリアは、フレームの上で、水平を出して付ける。ところが、そのフレームには泥除けがついて、泥除けにも本人の意向で色が塗られ、車輪も入り、組み上がっているわけです。

塗装を傷めずにあらたにキャリアを付けてフレームの上でロウ付けするとなると、すべて再分解して、フレームには水で濡らした雑巾を巻いてすることになる。そういうのはあまり感心しない。この忙しいのにとうていそんなことはやっていられません。寸法AもBも一台づつ違うので、すべて「ワン・オフ」です。その方は何をもって『幅の狭いのと交換してほしい』と言ってきたのか?

ならば、安易に「R&Fさんのとまったく同じに」などと言わぬほうが良い。

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