どーもここ数ヶ月間、不完全燃焼で、カレーを食べた気がしない。
「ああ、私は天竺を食べている」と言う気分にさせてくれるところが必要。どうもネパール式インド風カレーはもやもやしていてストレスがたまる。
だいたいネパール人の調理人はインド・カレーなんかまかないで食べてませんから。ネパール式の味噌汁のようなスープカレーを『ねこめし』のようにごはんにかけて食べている。
その彼らが出していながら決して口にしないのが「バターチキン・カレー」。インドの本当のバターチキンとは似ても似つかず、調理しているネパール人も不味いと口にしない。日本特有のそれを「本場の本格だと思って食べる日本人は哀れ」としか言いようがない。ああいう甘い「まがいものが美味いと感じる」のは大量生産ハンバーガー屋のケチャップが好きということをカレーにももちこんでいるあらわれ。
私がヘッドハントしたシェフは「日本へ来て初めてナンとインドカレーを見たようなほかのネパール人シェフには絶対負けない。自分は中学の時にインドに見習いで働きに出たから」と言っていた。
その彼の独裁が調理場で確立出来ておらず、この間行ったら、古いメニューの不味いほうが古いコックの調理で出てきた。「早く彼に全部まかせろ」とオーナーにプレッシャーをかけた。
問屋へ行き、加工屋さんと打ち合わせ、仲間と1時間ばかりビールを飲み、別れたあと、一人でこっそり秘密の場所へ。
ここのカレーは、「う~~~~~~~ん超弩級インド!!!!!」なのです。このお店8人しか座れない。今日もその8席のうち5人はインドの人。もう表を歩いているだけで磁石に引き寄せられるように、スパイスに酔って足取りがそちらへ曲がってしまう。
もう普通のインド屋とはまるで違うのです。
キッチンは1畳ぐらいの歩くスペース。すみにタンドールがある。ここでマトン・クーライを頼むと、カーライからぐつぐつ煮ている泡だったのが、そのまま皿に盛られ、ブクブクいっている。まさにインド版なべやきうどん。
この皿の中ほとんどすべてマトンなのです。ここでは私はライスを頼む。ひとくちここのライスを含むとふわ~っとインドで食べるライスの香りが口の中に広がる。ターメリックで色だけ黄色に染めたものではない。このお店私は4ヶ月ぶりぐらいですが、このライスの香りで、
「おおっ!この香りをオレは忘れていた!堕落していたな。」
と、ふと我に帰る。
カレーもまるで違う。実に幸福な時間を過ごせました。