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Channel: 英国式自転車生活
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こけしとシルエット2

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前のページの28号はリアのハブはシュパーブ、フロントはスプリントで、まったく揃っていません。しかし、そのようなことは乗っても見ても、誰も気が付かない。もともとこの車輌は「惜しげなく旅と実用で使い切る」ことを前提に組みましたので。クイックのスキュワーも前後で違う。余ってころがっている部品で作ったので。

ところがこの車輌、国内の雑誌にも海外の新聞にもカラーで出ている。自転車の本質とそういうところはほとんど関係が無いんです。

不思議なことに、レアな部品、高価な部品を付けるほど、『それをかばう心根』が出てきて、本気で使い切れない。少しの傷が付いても気にするようになり、ちょっとのことでもクヨクヨするようになる。

どんな人でもこれはそうだと思います。

私は、道具は使うほどに味と風格が出てくるべきものだとの意見を持っている。

そう考えた時、はたして、『壊れないシルエットの自転車』はどうすべきなのか?を熟考せざるおえない。

ハブがサンツアーであろうと、カンパであろうと、シルエットは変わらない。スモールフランジをラージにすると変わる。スズエのセミラージにしてもほとんど変わらない。なのでうちはスズエをスタンダードにしています。サンツアーとかカンパの130mmより狭いハブとなると、20年以上前の品物ですから、それを新車に要求するというのは本来は不自然な話。スポークの長さも変わってきます。

たとえば、さらにぺラン・マイヨールのハブと言う話になると、41mmのチェンラインを43.5mmに動かすのにワッシャーを交換することになりますが、さて、ベロ付ワッシャーのベロ部分はハブメーカーによって異なります。厚さもちょうどのものはない。意外に難しい話なのです。いまそういうワッシャーは売っていませんから。

零戦に2型と俗に言われているものがありますが、これは大失敗で、日本を負けさせた一つの要因を作っています。「1型の両翼を切れ」「より大型のエンジンを積め」と海軍に言われて設計を変更した。「翼の前面投影面積が減り、最高速度があがるだろう」「大馬力のエンジンで運動性能もあがるだろう」「羽の端を切り落したことによって空母にも積みやすくなる」と考えられた。そして、その図面には堀越二郎のハンコが押されて生産された。

そのとき疑問を感じてノートに問題点を書いたのは、堀越ではなく曽根技師であった。切り落した羽の直線部分の後ろに渦が出来て空気抵抗が増える。航続距離が激減した。空戦に使える時間がほとんどなくなった。

南方の島々を奪還して、制空権を取り戻す作戦に2型が投入され、その海戦に加わった9割の飛行機と優秀なパイロットを失った。

こういう、自転車をグレードアップして部品を高級化して似たような状況が起こることはしばしばあります。

自転車を至近距離で見て、細部に心をとられると、細部が目に入る、これは同時に細かい傷や錆なども目にはいるということで、自転車は常に「新車のようでないといけない」というところへ落ちいりやすい。

実際、そうした失敗した機械はシルエットもよろしくない。

零戦2型も、MGB-GTV8も、自転車に於いても、私は共通していると思います。

私は「機械はほんとうのところスペックではない」と考えています。

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