新緑まっただななかです。
数百年前の樹々を眺め、巨大な天然の藤の満開を見る。
木漏れ日のほの暗さのなかの燃える新緑に、セメントの箱の中の光はどんなに輝かせようとかなわない。
微かに残る、かつてはお茶を自給自足で育てようとした痕跡。
木漏れ日の柔らかい翠の光には、原子の威光で、数十億萬円の御殿に住む栄華をきわめた者たちの贅沢も色褪せる。
こころ楽しまぬ者たちの不幸は、毒壺の汚物とともに、硝子に詰めて地中深く埋めても休まらない。
翠のやわらかさにつつまれて、貧しくとも豊かに、雉鳩とともに歩む。
森の翠の光を浴びるものはさいわいなるかな。