Quantcast
Channel: 英国式自転車生活
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3751

もう一度行きたい?

$
0
0
いままでずいぶん多くの国を旅したり住んだりしましたが、「どこの国が好きか?」と言われると、心中複雑です。

これは「おとうさんとおかあさんとどっちが好き?」とこどもに聞くようなものでしょう。ただし、「いままで、学校で、何学年の、どのクラスにいた時が好きか?」と訊いたら、誰でも比較的容易に答えられるのではないか?

別に残りの人生で、顔を見なくてもいいや、とか顔も見たくないのが大半だったら、クラス会も不要なはず(笑)。

それが自分で何十万円の金を使って行く外国の話になると、私などはもっとドライになる。

アメリカは年に二回、多い時は年に三回行っていましたが、仕事での用がなくなってから行かなくなりました。
「たまには来いよ。」
とアメリカ人の友人たちには言われますが、あまり興味がない。自分はアメリカ型の文明にまったく興味がない、と言ってよい感じがします。これは人のタイプが大きく別れるところではないか?という気がします。

どこかの国に暮らす、というのは、その国の毎日の、ある意味ルーティーンの繰り返しにたえられるか?ということと深く関わっていると思う。

私がいたのはカンサスとかミズーリとか、南部とか東海岸のメリーランドとかですが、「アメリカは金がない人にはたいへん住むのがつらい国だ」という印象があります。

日本の若者にとって日本はしだいにそうなってきている気がする。

正直、アメリカにこのまま死ぬまで戻ることがなくても、別に後悔しないと思う。その意味、オーストラリアにも同じような印象がある。自然はたしかにどちらも雄大だが、「味の薄いデカい海老」のような感じがする。美術館などもまったく退屈する。本屋もない。アメリカ、オーストラリアで英国のブラックウエルズ、やかつてのへファーズと互角の本屋は一軒もないと断言できます。ワシントンDCにもなかった。日本には多摩センターの丸善がブラックウェルズに近い。

しかし、意外なことにイランは文化レベルが高かった。路上にシェークスピアやカント、ラシーヌ、トルストイなどの本が並べられて売られていて、靴屋が靴の箱のなかに隠して、クラシックの音楽からマドンナのカセットテープまで売っていました(彼の国では音楽は原則頽廃のものとみなされている)。政治談議などをするような喫茶店もある。

英国ならパブやカフェがそういう場所になるわけで、それは日本でも減ってはいるがある。

もうひとつは外国の人に対して、どういう風に開かれているか?という問題もあると思いますが、私は英国、オランダ、イタリア、オーストリアの4つの国はきわめて「国際的」な気がします。フランスは場所による。スイスはもっとも難しいという印象がある。アメリカのジャクソンなどのディープ・サウスなどはほとんど日本人には不可能に思えました。彼らの東洋人への偏見も強いし、あの知的刺戟のないところでの毎日は息苦しくなると思う。

しかし、そういうことも、「日本」という背景を背負っていればこそ、なわけで、もし自分がマイナーな発展途上国(経済規模の小さい国に向けたこの日本の単語もどうかと思いますが。もしアメリカ並の経済発展をとげれば、利休や宗達や光琳、北斎や華道や桂離宮や精密機械、根付や鍔、織物、黒澤映画、世界に冠たるモーターサイクルなどが出来るのか?そういうものは日本は経済弱小国の時に作っていた。経済の成長と文化レベルは必ずしも一致しない。発展と豊かさが一致しない以上、経済発展すら必要ないのではないか?)の人間であったら、同じような待遇を受けるのか?ということもあります。事実日本は19世紀からすでにヨーロッパで、その文化的な面で尊敬されていた。

一部で、アニメのようなものがこれからの日本の文化と言う人もいますが、海外ではこの3年ぐらいで急激にその評価が落ちている。各国の新聞に「あきられてきている」ことが特集されました。この分野で、これから制作費の安いほかのアジア諸国が伸びてくるでしょう。

この15年で、日本へ来る海外の人の国別人口比が大きく変わりました。先進諸国からの旅行者が激減し、発展途上国からの人が増えている。これは何を意味するのか?

「日本はもう懲りた。疲れ果てたよ。」そういう声はよく耳にします。日本在住の欧米人は休暇のとき、ほとんどまったく国内旅行をしない、のがここ20年間ぐらい私は非常に気になっていました。それは5年住んでも10年住んでもしないのです。「どこへ行っても同じ感じがする。旅行した気にならない」と言う答えがかえってくる。

「古い日本はすばらしいが、最新の日本はつまらない、いやむしろくだらない」とも、私はよく耳にします。これはじつはネパールやタイ、バングラデッシュ、パキスタンの若者などからも聞こえてくる。国へ帰ればテレビもないところから来た人たちが「日本のテレビはくだらない」と言って見ない。これはけっこう深刻なのではないか。

日本が「もう一度行きたい国」であり続けるためには、「あふれかえる物が買えるだけの場所」「目が痛いくらい照明の付いたVANITY CITY」であるだけではだめだろうと思います。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3751

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>