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Channel: 英国式自転車生活
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無電化住宅が新しい

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私が英国で住んでいた家は、ものすごく古く、またそこが実に新しかった気がするのです。

実質的に1938~1946年の戦時中生活をそのまま続けているのですが、それが現在のほぼすべての問題を解決していました。

まず、電気は使わない。みんなの集まる食堂にも電球はひとつだけ。洗い物をする流しのところにひとつありましたが、洗う時だけつける。もうひとつはキッチンストーブの調理場のところにひとつ。廊下と階段は通る時だけつけて、あとは消す。玄関のランプもふつうは点けません。

何よりも決定的なのは、その家では「テレビ・ラジオが禁止」でした。音は会話と音楽だけ。

さらに興味深いのは、冷蔵庫がなかったこと。もちろん、クーラーもない。

一切の調味料はラダーという涼しい小さい蔵のようなところに置き、たまごは毎日庭からとってくる。野菜は庭に生えているのをぬいてくる。肉とアイスクリームだけは小さい冷凍庫に入れ、牛乳は毎日新しいのがとどけられ、その日のうちに使いきる。

最初は「そんなことがはたして可能なのか?」と思いましたが、生活してみるとまったく問題がない。

しかし、コンピューターは最後の頃には3台ありました。地球環境の専門の学生のコンピューター、あとは旧ソヴイェトの宇宙センターから亡命した科学者のコンピューター。もう一台は言語学者のもの。

そうかと思うと、庭のもと牛小屋と農機具置き場だったところをきれいにして、ロウソクで、電気無しで生活しているやはりソヴイエトから亡命した画家が住んでいた。

驚くほど電気を使っていませんでした。

もうひとつ思い出すのは、その家では電気掃除機を使わなかったこと。「音がうるさい」と昔ながらのほうきと水拭きでした。

洗濯機はあった。しかし乾燥機はなく、おもてで干すのが原則。現代日本の感覚では変わっていると思われるかもしれませんが、にわか雨に降られても気にしないでそのまま洗いなおさず乾かす。「汚れはもう落ちている、水がもったいない。」

きわめつきは石鹸で、食器洗いには化学合成洗剤は使いません。「環境に悪い」と、まず大人数の食器をたらいに入れる。そこへ薄く削いだ無添加、無香料、保存剤、防腐剤なしの天然素材石鹸をいれる。その上へ熱湯をざーーーっつと注ぐと「煮沸消毒」になる。そのお湯も石鹸で泡立ちます。それをガラガラと木の棒でかきまぜる。それをしゃくい出して、2mぐらいある長い布でどんどん拭いてゆく。それを隣の仕上げの熱湯の中にすすぎのために放り込んでゆく。再度ガラガラやって、その仕上げのほうのお湯は窓ガラスなどの掃除に使うか、庭の植木に冷めてからまく。

驚くほど無駄がありませんでした。そこで長年そういう生活をしていたので、日本へ戻ってからもそういう「緊縮節約生活」があたりまえになっています。

あとはご存知のとおり、どこへ行くのも自転車で。これは英国時代も今も同じ。

あそこに風力発電とかをつけたりしたら、もっとすごかったのではないか?とよく思います。

そういうなかで、「知的文化的な部分だけ先進的に深まればよいのではないか?」

現代日本のテレビを見ると、こんなつまらないものを大電力を使って放送し、それをまた電灯とテレビをつけた無数の人が見て、電気を大量消費するのはいかがなものか、というテレビ番組が多い。

電力も物もどんどん消費して、どんどん経済生長というのはもはやかなり時代遅れ。「質を落とさず、いや、むしろ向上させつつ、消費サイクルを量より質へ転換してゆくことが問われる時代なのではないか?

電気が暗かったら、ロウソクを食事のテーブルで光を足すのに使ってみる、、、そういうほうが優雅で、かつエコなのではないのか?

日本など、もともとそういう生活スタイルのなかで、世界にも稀な豪華なエコスタイルを実現していたはずではなかったのか?「経済成長」より「優雅なる没落」を考えたほうが良い感じがします。3月11日以前には、日本の新築一戸建て注文住宅の80%以上はオール電化だったと言います。日本のすべての家がオール電化になると、じつに原発70機分ほどの電気がさらに必要となるらしい。そういう家電を売ってメーカーは経済生長、一方でさらに原発建てまくり、実際の製品生産は国外という、国内での労働満足度を下げる経済設計図は間違っている。

まずは現代の消費形態、エネルギー消費を「何のために?、何の目的に?」ということから考え直す必要があると思います。「経済生長」というのも毒まんじゅうみたいなもので、経済生長がすすんで生活にゆとりや豊かさが増すとは単純に言えない。私の実感では1980年代末から、25年。日本の生活はものはあふれかえり、すべてが自然の中まで建て混んできましたが、逆に大多数が貧しくなったようにみえます。

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