「いい生胡椒が手に入りましたよ」
とレストランで言われまして、迷わず、その料理をお願いしました。私は生胡椒には目がありません。
生胡椒もさまざまでして、ず~~~んと胃にこたえて、もたれるものもあり、またスッキリと爽やかで、体調が整う感じのものもあります。
かつて、古代世界では胡椒は同じ重さの黄金と等価値でした。
なんでも今回の生胡椒は、現地では王族・大富豪しか食べないような最高品質の品種だということで、たしかにいままで食べた事の無い品のよさでした。
そういういわくのあるものは、だいたい、それなりの理由があるものだと私は考えています。たとえば中東の最高級のプルーンとかデーツは、食べるとあきらかに体調が良くなる感じがする。
お隣の国の「ジンセン」なども長いことかけて生育した大きいものが収穫されたあとには、長い間にわたって、そこには他の植物は生えないといいます。土地のパワーを吸い尽くして育つ。
ですので、紅茶なども、化学肥料で育ったものはなんだかコクがない。
私は珈琲が好きですが、珈琲はむしろホッとする。本当に疲れている時は、緑茶のいいやつに、お寺のように梅干しだとか、舌がひきしまる感じの最高級の紅茶が利く気がします。
デーツなどもそうで、良いものは食べてすぐわかる。中東では「デーツは食べ過ぎるな」とよく言われました。
今回の生胡椒は、まるで葡萄の小さいもののようにプチプチした感じです。それがなんともいえず、爽やかですがすがしい感じのスパイス感。いくらでも食がすすむ。牛肉との相性も最高でした。
胡椒は正倉院のなかにも入っていますが、捧げ物として、それほどの価値がありました。大航海時代には、命の危険をかえりみず、大船団で海を渡り、ヨーロッパから地球を半周以上して、マラッカまで行って、それでも大儲けできたというくらいの貴重品でした。
それがいまや、私のような者でも口に出来る。
店主の方は「ほんものの贅沢」を知っている。それを、創造力と知識で、みごとにつくりだしていると思います。野口先生1枚で手に入る贅沢ですが、それはかつての王侯貴族にも難しかった贅沢なのです。