今は満月期間

８月３１日は満月でした。そしてその前日には、仙台のほうで余震が明け方あったようです。月の引力の影響で、満月の前後には地震がおきやすい。たしか、スマトラ沖の時も満月の時期だったと思います。

ですので、３月１１日以降、私は満月の時期には、食料の買い置きが底をつくようなことがないように心掛けています。まあ、地震が起こる時ばかりは予想がつきませんから、あくまで統計的にすこし備えておく、程度の気安めですが。

意外なことに、月は人間にも影響を与えるようでして、ニューヨーク市では、満月の頃には犯罪とかケンカがやたら増えるので、満月の日には警察官を増員している、とテレビで見たことがあります。満月時期に人が変化するのはなにもオオカミ男ばかりではないらしい。

古来、英語の単語にはlunatic,とかlunacyとかいう語があります。昔から人類は月が人間に影響を与えることに気がついていました。

女性の場合も、月の満ち欠けが体調に影響を及ぼすのは、もうあきらかでしょう。それはもう、かなりな高齢になってからも、自覚症状がある。私の老母も満月の時期になると心臓の具合がすぐれません。

もう数年前に故人になられましたが、私の家の近くに小説家の方がおられました。その方がたまたま二輪車が好きだということで、本来は医師に運転をとめられているのですが、二輪車（自転車を含めて）が好きなことから、あるバイク関係者が私のことを彼に教え、以来、うちへ電話をかけてくるようになりました。

その方が、困ったことに、たまに深夜電話をかけてきたりするのです。さすがにそれには困って、「夜の電話はうちには病人もいるのでやめて欲しい」と伝えました。

以来、夜の電話はなくなったのですが、うちの老母が「あの人は、いつも私の心臓の具合が悪い時を見計らったように電話してくるね。ものすごいストレスになっている」というので、ためしに電話の脇に「月の満ち欠けのカレンダー」を貼っておいたのですが、みごとに一致しまして、満月になると電話してくるという事実が判明しました。

「◎×さんはいつも満月になると電話してきますね。」
と私が言うと、
「アハハ、アハ、アハハハハ。それじゃR&Fさん、私がまるでオオカミ男みたいじゃないですか。アハハ。」
本人にはまったく月が満ちると電話をかけてきているという自覚がないのが面白いと思いました。

私の老母はひそかに「満月さん」と呼んでいました。

その方、たいへん律儀で真面目を絵に描いたような方でしたが、ある満月期間の深夜、私の友人のところに電話してきて、
「盗聴されているおそれがありますのでっ！」
と言いながら、突然ドイツ語で話し始めたりしたそうです。
「いや◎×さん、僕はドイツ語できないんですがね。」
と言うと、
「ハッ！そうでしたか、失礼いたしました。」
と電話が切れたといいます。その方、「記憶は頭の中にある半透明の２枚のDVDディスクのような、お互いが反対方向に回転する煌めく部分に蓄積される」とかご自分の小説に書いておられましたが、通院されていることでもあり、聞き流しておりました。

満月期間は自然を愛でるには最高ですが、地震が来やすいことなどは困ったものです。満月期間に要注意。

私はいまだにムーン・カレンダーを机の脇に置いています。