日本のネットニュースではランス・アームストロングがすべてのタイトルを剥奪され、永久追放された、アームストロングはそれ以上争わない姿勢をかためた、、、としか書いてありません。
もうちょっと知りたいな、と思ってyoutubeで、今回のことのきっかけとなった、アメリカのニュース・テレビ番組「60minutes」などを見てみました。ついでに同じくドーピングを告白したフロイド・ランデイスのインタヴューも。
残念ながら日本語のサブタイトルはありません。
この60 minutesにタイラー・ハミルトンは出演していろいろと語ったのですが、ハミルトンの言っているポイントはわかり易く言うと以下のようなことです。
1)みんな、とてつもない勢いで走っていた、いつもは自分に付いてこられないような選手が、ある時突然、ものすごく速くなっていたり、あちこちにそういうドーピングは蔓延していたと思う。
2)ある時、自分の医者から「君はヘモグロビンが足りないね」と言われ、それが最初は何のことを言っているのかわからなかった。それがすべてのドーピングへゆくきっかけであったということ。
3)ランスがそれらを手配してくれて、ある時、そういう薬が届けられたということ。盗聴や立ち聞きを警戒して、すべては暗号を使って喋られていた。
4)タイラー・ハミルトンが手を染めたのはEPOの使用と血液ドーピングであったということ。
5)ドーピングに詳しいことで有名な医師、マケーリ・フェラーリが「ドーピング・スケジュール」を作ってくれていて、ハミルトンも1年間ほど、彼の指導を仰いだという。
6)マケーリ・フェラーリは2002年にイタリアでドーピング問題で追放されているが、アメリカのテレビ局の調査では、アームストロングはマケーリに2010年までお金を払い続けていた。
7)2001年6月のツアー・オヴ・スイスで、ドラッグ・テストを気に病んでいたハミルトンにランスは気にするな、と言ったとのことで、ハミルトンはちゃんと手を回しているから平気だとランスから聞いた、という。
8)アームストロングは、ドーピングを監督する立場にあるインターナショナル・サイクリング・ユニオンに天文学的な寄付をしていて、それは選手がドーピング検査にかかわる組織に巨額の寄付をするなど、前代未聞の不自然な行為なのではないか?とグレッグ・レモンらが追及しています。アームストロングは何の問題もない行為だと反論。
9)ハミルトンによると、彼ははアームストロングに連れられて自家用飛行機でスペインへ行き、ツールの前にそこで血液ドーピングをしてもらった。
ハミルトンも全米に放映されるテレビで、ずいぶん赤裸々に語ったものです。
彼はアテネ・オリンピックの金メダルを自ら返却しています。過去の忌まわしいドーピングのカルチャーが思い出されて、もう見るのが辛くなってきて返却したそうです。
ハミルトンは今は完全引退して、若い青少年にロードレーサーの乗り方を指導し、本を書いていると言います。一方のアームストロングは「すべてはハミルトンの欲とむさぼり、自分の本を売るためのデッチあげだ」と断罪しています。
しかし、自分の本を売るためにオリンピックの金メダルをみずから返却するでしょうか?また訴訟社会アメリカでデッチあげのそんなことをやったら、弁護士費用その他で、無一文になるのではないか?事実、グレッグ・レモンはかなりの弁護士費用を払って戦い続けてきたと語っています。
ところがハミルトン以外にもフロイド・ランディスをはじめとする、アームストロングのほかのかつてのチームメイトたちも、つぎつぎとドーピングを認め、アームストロングと反対の陣営に入りました。
私はかつては、ハミルトンが好きではありませんでした。アームストロングを私のひいきの選手が破りそうになると、いつもハミルトンかヒンカビーがたちはだかってアームストロングをまもった。しかし、いま、引退しておどおどとして、「そこまで話して良いのか?」と訥々と語る、ヘルメットもサングラスもないハミルトンは、ある意味ふっきれて、すがすがしい感じすら漂わせている、人生の折り返し点をちょうど回った1自転車乗りに見えました。
youtubeへの書き込みもすさまじい。アームストロングを敬愛するあまり、ハミルトンを嘘つき呼ばわりする人、アームストロングをアメリカの恥とののしる人、なかには癌の専門医の書き込みもあって、癌からいくら生還しても、それ以前より体力はどんな人間でも5%以上落ちる、医学的見地から、癌から生き残った人間があれほどの常人以上の身体能力を維持するのはドーピング以外考えられない、などというのもありました。
今回のことは、アームストロング一人がやっていたことではなく、チームメイトをまきこんだ組織的なことで、その隠ぺい工作の規模の大きさにおいて、過去の事例より群を抜いて悪質・巧妙であるということで、異例の全記録剥奪・永久追放の決定となったようです。
「60minutes」にでてきた専門家は、「何百回検査してもシロだったからやっていないことにはならない。陸上競技で記録剥奪されたマリオン・ジョーンズもドーピングをやっていたことを最終的に自白したが、彼女の場合もいくら検査してもでなかったではないか」とテレビの番組内で語っています。
番組の中の調査では、実際のところ、ツアー・オヴ・スイスの時、一度、スイスのラボは「suspicious」疑わしい、という判定をアームストロングに出したと言います。しかし、それ以上のさらなる調査はされなかった。
いまや、アメリカの自転車界は大騒ぎです。いったいどういう結末になるのでしょう?
ちょうど、グレッグ・レモンは、自転車競技に今、力を注いでいる英国へ行き、コヴェントリー大学で、「サイクリングは死に体である」と言う講演をしています。英語で「サイクリング」というと「レース」を指し、日本で言う「サイクリング」は英語では「サイクル・ツーリング」になります。
レモンは自分の息子を、今のプロサイクリングの世界へは行かせたくない、と語っていて、多くのドーピング・スキャンダル、さらにはそうしたドーピングによる選手の若死に、そして急増する自転車競技選手の自殺率、とても息子をいまそういうところへはやりたくない、と講演で語っていました。
ついでに1997年のツールのサンテッチェンヌからラルプディエズまでのビデオを見ました。争っているのはヴィランク、ウルリッヒ、パンターニの3人。奇しくもこの3人、全員がのちのちドーピングで陽性反応が出ています(パンターニはヘモグロビン値がたった2%高かっただけ、血液ドーピングの疑いをかけられた)。
その後のパンターニとアームストロングのモン・バントウでの1騎打ちも。この2人ともがドーピングで「黒」になるとは誰が考えたでしょうか?
しかし、今見てもパンターニはすごい。彼のビデオを見たあとではコンタドールは少々生ぬるく見えます。そのコンタドールもドーピング引っかかってます。
みんなドーピングで黒なら、やっぱりダントツ一番スゴイのはパンターニだ、と一人納得するのでした。
youtubeでマルコの走りを見てみてください。
Marco Pantani L'ultima grande salita で出ます
もうちょっと知りたいな、と思ってyoutubeで、今回のことのきっかけとなった、アメリカのニュース・テレビ番組「60minutes」などを見てみました。ついでに同じくドーピングを告白したフロイド・ランデイスのインタヴューも。
残念ながら日本語のサブタイトルはありません。
この60 minutesにタイラー・ハミルトンは出演していろいろと語ったのですが、ハミルトンの言っているポイントはわかり易く言うと以下のようなことです。
1)みんな、とてつもない勢いで走っていた、いつもは自分に付いてこられないような選手が、ある時突然、ものすごく速くなっていたり、あちこちにそういうドーピングは蔓延していたと思う。
2)ある時、自分の医者から「君はヘモグロビンが足りないね」と言われ、それが最初は何のことを言っているのかわからなかった。それがすべてのドーピングへゆくきっかけであったということ。
3)ランスがそれらを手配してくれて、ある時、そういう薬が届けられたということ。盗聴や立ち聞きを警戒して、すべては暗号を使って喋られていた。
4)タイラー・ハミルトンが手を染めたのはEPOの使用と血液ドーピングであったということ。
5)ドーピングに詳しいことで有名な医師、マケーリ・フェラーリが「ドーピング・スケジュール」を作ってくれていて、ハミルトンも1年間ほど、彼の指導を仰いだという。
6)マケーリ・フェラーリは2002年にイタリアでドーピング問題で追放されているが、アメリカのテレビ局の調査では、アームストロングはマケーリに2010年までお金を払い続けていた。
7)2001年6月のツアー・オヴ・スイスで、ドラッグ・テストを気に病んでいたハミルトンにランスは気にするな、と言ったとのことで、ハミルトンはちゃんと手を回しているから平気だとランスから聞いた、という。
8)アームストロングは、ドーピングを監督する立場にあるインターナショナル・サイクリング・ユニオンに天文学的な寄付をしていて、それは選手がドーピング検査にかかわる組織に巨額の寄付をするなど、前代未聞の不自然な行為なのではないか?とグレッグ・レモンらが追及しています。アームストロングは何の問題もない行為だと反論。
9)ハミルトンによると、彼ははアームストロングに連れられて自家用飛行機でスペインへ行き、ツールの前にそこで血液ドーピングをしてもらった。
ハミルトンも全米に放映されるテレビで、ずいぶん赤裸々に語ったものです。
彼はアテネ・オリンピックの金メダルを自ら返却しています。過去の忌まわしいドーピングのカルチャーが思い出されて、もう見るのが辛くなってきて返却したそうです。
ハミルトンは今は完全引退して、若い青少年にロードレーサーの乗り方を指導し、本を書いていると言います。一方のアームストロングは「すべてはハミルトンの欲とむさぼり、自分の本を売るためのデッチあげだ」と断罪しています。
しかし、自分の本を売るためにオリンピックの金メダルをみずから返却するでしょうか?また訴訟社会アメリカでデッチあげのそんなことをやったら、弁護士費用その他で、無一文になるのではないか?事実、グレッグ・レモンはかなりの弁護士費用を払って戦い続けてきたと語っています。
ところがハミルトン以外にもフロイド・ランディスをはじめとする、アームストロングのほかのかつてのチームメイトたちも、つぎつぎとドーピングを認め、アームストロングと反対の陣営に入りました。
私はかつては、ハミルトンが好きではありませんでした。アームストロングを私のひいきの選手が破りそうになると、いつもハミルトンかヒンカビーがたちはだかってアームストロングをまもった。しかし、いま、引退しておどおどとして、「そこまで話して良いのか?」と訥々と語る、ヘルメットもサングラスもないハミルトンは、ある意味ふっきれて、すがすがしい感じすら漂わせている、人生の折り返し点をちょうど回った1自転車乗りに見えました。
youtubeへの書き込みもすさまじい。アームストロングを敬愛するあまり、ハミルトンを嘘つき呼ばわりする人、アームストロングをアメリカの恥とののしる人、なかには癌の専門医の書き込みもあって、癌からいくら生還しても、それ以前より体力はどんな人間でも5%以上落ちる、医学的見地から、癌から生き残った人間があれほどの常人以上の身体能力を維持するのはドーピング以外考えられない、などというのもありました。
今回のことは、アームストロング一人がやっていたことではなく、チームメイトをまきこんだ組織的なことで、その隠ぺい工作の規模の大きさにおいて、過去の事例より群を抜いて悪質・巧妙であるということで、異例の全記録剥奪・永久追放の決定となったようです。
「60minutes」にでてきた専門家は、「何百回検査してもシロだったからやっていないことにはならない。陸上競技で記録剥奪されたマリオン・ジョーンズもドーピングをやっていたことを最終的に自白したが、彼女の場合もいくら検査してもでなかったではないか」とテレビの番組内で語っています。
番組の中の調査では、実際のところ、ツアー・オヴ・スイスの時、一度、スイスのラボは「suspicious」疑わしい、という判定をアームストロングに出したと言います。しかし、それ以上のさらなる調査はされなかった。
いまや、アメリカの自転車界は大騒ぎです。いったいどういう結末になるのでしょう?
ちょうど、グレッグ・レモンは、自転車競技に今、力を注いでいる英国へ行き、コヴェントリー大学で、「サイクリングは死に体である」と言う講演をしています。英語で「サイクリング」というと「レース」を指し、日本で言う「サイクリング」は英語では「サイクル・ツーリング」になります。
レモンは自分の息子を、今のプロサイクリングの世界へは行かせたくない、と語っていて、多くのドーピング・スキャンダル、さらにはそうしたドーピングによる選手の若死に、そして急増する自転車競技選手の自殺率、とても息子をいまそういうところへはやりたくない、と講演で語っていました。
ついでに1997年のツールのサンテッチェンヌからラルプディエズまでのビデオを見ました。争っているのはヴィランク、ウルリッヒ、パンターニの3人。奇しくもこの3人、全員がのちのちドーピングで陽性反応が出ています(パンターニはヘモグロビン値がたった2%高かっただけ、血液ドーピングの疑いをかけられた)。
その後のパンターニとアームストロングのモン・バントウでの1騎打ちも。この2人ともがドーピングで「黒」になるとは誰が考えたでしょうか?
しかし、今見てもパンターニはすごい。彼のビデオを見たあとではコンタドールは少々生ぬるく見えます。そのコンタドールもドーピング引っかかってます。
みんなドーピングで黒なら、やっぱりダントツ一番スゴイのはパンターニだ、と一人納得するのでした。
youtubeでマルコの走りを見てみてください。
Marco Pantani L'ultima grande salita で出ます