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Channel: 英国式自転車生活
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スマホ不況

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このところあちこちで『最近の若者はどこで金を使っているんだろう?』とあちこちで訊いてみている。とにかく、使っている気配がない。

私が10代、20代のころは、自転車に使い、バイクに使い、短波ラジオで受信カードをあつめるためにマルチバンドの高級受信機を買い、オーディオに使い、洋服や靴に凝り、腕時計に凝り、クルマに凝り、そして旅行だった。それ以外に、音楽をやっているのは楽器につぎこみ、、、『万が一の時には、親の家へ逃げ帰る覚悟』で使いまくっていた。通常はその前にスピーカーを売ったり、カメラを売ったり、バイクを小排気量のものに買い替えて、急場をしのいだ。

今の若者は、売るものがないのではないか?CDも本もひとつ5円とか10円とか、しのげるほどの金にならない。パソコン関連、デジカメ、電気製品は『モデルチェンジによる陳腐化が早い』ので、これも金にならない。そうかといって、バイトで稼げる金額は知れている。

いまや、バイクもクルマも若者は買わなくなって、今年の東京モーターショーはヨーロッパや北米などの海外のメーカーがのきなみ出店を取りやめたという。完全に隣国のモーターショーに主導権を奪われた。

たまたま、昨日、ジョイ・アンチの直営ショップの前を通ったら、夏休みの土曜日なのに客が一人しかいなかった。このところ、見るといつもそんなものだ。4人以上の人がいるのを見たことが無い。

そういう状況だから、長年、半世紀をはるかに超えるほど、自転車趣味の人の間でなじみの深かったローヤル・ノートンさんがフレーム製造部門を除き先月廃業した。

逆に言うと、ハンドビルトのフレームは唯一採算がギリギリ合うが、しかし、フレーム材料のほうも『全体量はすでに定まっている』。国産の変速器メーカーがスチール用のエンドの製造をやめてから、すでに20年以上が経っている。タカハシテクノさんもやめているし、イタリアあたりでも、中台製のエンドを使っていたりする。そうすると、マスプロ・メーカーとの差がほぼ無くなってくる日は近い。

たぶん、リングバーナーで周囲を熱して、サーモグラファーで温度を管理しながら、AIがロウ付けするほうが、人間がやるよりうまくゆくだろう。フレームの小物パーツは大企業が大量発注する方が、安くて良いものが出来る。

おそらくは、『小回りの利くところ』が唯一生き残るだろうし、ツーリング系のものをやっているところの方が、レーサーをやっているところより有利だろう。しかし、ツーリングの経験の豊富なビルダーは、若手ではあまり、というかほとんどいない。

今ぐらいの時期には、かつては若者は、自転車で長距離旅行とか、バッグパッキングで海外旅行とか、自転車やバイクで北米横断とか、世界的指揮者の方などは、スクーターで世界大旅行にかけていた。バイク雑誌の編集長のサトヘンなども北米横断をやっていたはず。

人と違う体験は一生の財産なはずだが、現代では『スマホで知ればよい』と考えるのかもしれない。

暑いので、アヌシュカ・シャンカールのシタールを聴いていた。彼女の父親のラヴイ・シャンカールのコンサートには、日本でも英国でも何度も行ったが、ステージの緞帳があがると、『天上の雲が降りて来たかのような、独特の香の煙が客席へ降りて来た』。私がここで『あれは素晴らしい香りだった。いろいろお香を買ってみたが、あんないい香りのものに出くわしたことが無い』と言っても、体験したことが無い人には、どういう香りかわからない。

『いや、インドの大道で売っているプーリやチャパティは美味い。日本で食べるナンとはまったく別の世界のものなんだ』と言ったところで、経験はほんとうのところ伝わらない。

いくらスマホで検索しても、わからないことがあるはず。『チャパティに油は使いますか?オリーヴ・オイルですか?バターですか?ギーですか?粉は全粒粉ですか?あるいは全粒粉半分ですか?ライムギですか?』

そう訊かれたら、スマホで受け売りの人は答えに詰まるだろう。

たぶん、TVの旗色が悪いのは、TVそれ自体が時代遅れなものになり、スマホがそれまでのテレビの役目、テレビそれ自体、テレビゲーム、オンラインショッピング、テレビ電話、自動翻訳機などの機能をすべてひとつでこなすようになったからだろうと私は見ている。

しかし、それは、一方で、コンサートにも行かない、ヴァーチャルなゲームで冒険へ出かけない、自分一人の乗り物にも乗らず、すべてスマホで済ますから、字が汚くてもいい、知識もググればいいからいらない、外国語も話せなくてよい、ゲームでバトルをやっているから身体も鍛えなくていい、、、そういう風になっているのではないか?

それは、体験が似たりよったりの人たちばかりになり、最後の最後は、生まれつき美男美女であるかそうでないか、そこにしか差はなくなるのではないか?と私は思いますね。

私が10代、20代のころ、今のように、すぐ『ブザイク』などとは言わなかった。その人の魅力や個性ははるかに複合的なものだった。

さて、なんでも実体験なく、スマホの窓越しでことは足りるのか?やがては『スマホの中の自分のアバターがデジタル美少女とこどもをつくってくれるから、自分はそれをタマゴッチを育てるように画面の中で育てればいいや』と思うのだろうか?(爆)

いや~、今の世界は私にはよくわかりません。

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