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Channel: 英国式自転車生活
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貧乏玄関

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私は『ブレーキレバーの裏側までホコリをとって磨き上げる』ようなことはしない。

自転車はあくまでも『道具』なので、扱いも道具以上にはやらない。これは、他の道具、たとえば、喫煙具などでもそうだが、ただし、無造作に使っているように見せて、カギとライターを同じポケットに入れるとか、革の小銭入れとカギを一緒のポケットに入れるようなことはしない。

『無意味なキズはつけたくない』。それでもつくキズはしかたがないが、『転倒によるキズはぶざまだと思う』。

前住んでいた家で、駐輪場を見ていると、10代~20代の若いのが、自分の自転車を駐輪場にガーーーーンとちからいっぱい適当にぶち込んで、自分の家に入って行く。それによって、他の人の自転車にキズが付くというようなことは思考できないらしい。


一度、『これは普通の自転車ではない。深刻なキズを付けられたから、損害賠償請求しようか?その自転車を塗った人は、かつて献上車両を白く塗り、花の紋章を描き、金線を引いた職人だ。応分の代金を払ってもらうぞ。』とためしに言ってみた。実際には取りませんでしたが(笑)。

足の裏からドクドクと血が抜けて行くような顔をしていた(笑)。


町内会の用事で、その家へ行く機会があったのだが、まあ、玄関に脱ぎ捨てられている靴が散乱していて、足の踏み場もなかった。『ああ、こういう貧乏玄関で、しつけの悪い奴が、駐輪場でひとの自転車まで粗末に扱うのだな』と、玄関を見て納得した。

広い狭いではない。よく掃除をしてあって、靴がそろえて脱いであって、場所が無ければ、茶室でのように裏を合わせて脇へ立てておいてもよい。そこへ趣味の花でも、皿でも、絵でもあればよいと思う。しかし、そうした趣味のものは一切無かった。脱ぎ散らかした靴が雑然とある。

不用意に裸足で踏んだら水虫がうつりそうな、何とも不潔な感じ。生理的にダメです。

28号の一号車のBBのシャフトが英国から届いた。ちょっときれいにしようと取り掛かったついでに、

『日本で駐輪していると、どれくらい物を壊されるか』写真を撮っておこうと思い立った。

20年ほど乗って、走った距離は16万キロをはるかに超えているだろう。20年間転倒歴無し。その間に四国を廻り、京都から東京、東京から善光寺、道志や甲府へ何度も行き、毎日買い物に行き、そのあいだ、まったく無傷。それが、このくらい駐輪場でむごいキズを付けられ、凹まされる。

駐輪場はそういう状況を放置して、決して改善しようとしません。

ボトムブラケットまわりのホコリを払ってみると、ほとんど無傷で乗っていることがわかる。転倒歴はゼロなので、転倒によるフレームの狂いはない。

ホームセンターで買った1万2千円の自転車に乗った『貧乏玄関の住人たち』に、ガーーーーンとあちこちの駐輪場でやられて、フレームチューブが凹んだり歪んだりしている。他人の自転車をここまで凹むほどぶつけて、気が付かないような人間は、仕事もまともにできない人だろうと推察する。『キズを付けても、どうせ12000円で買ったんでしょう?』ぐらいの低い見識。

『物が安くなるのは、社会的・文化的によいことではない』。昭和30年代、自転車は高級品だったので、中流のど真ん中以下の家庭では中古自転車を買っているところが多かった。新車はそれは大切にされた。中古もしっかり分解掃除され、調整され、それでも大切に乗られていた。粗末に扱う人などいなかった。

英国やイタリアで他人の自転車を粗末に扱うことはありえない。通常、『 What a beautuful machine !』などと素人さんでも声をかけて来る。

つまり、『日本では自転車はホームセンターやスーパーで買える安物』。リスペクトがない。恐産主義の國のボール紙で作った自動車トラバントとか、廃品のステンレスの板を打ち抜いて作ったナイフとフォークのように、すべての耐久消費財がなりつつあるのかもしれない。

そういう生活の先に、世界を驚かすmade in Japanは難しくなるのではないか?

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