いま、ちょうど6時を回ったころですが、フランスだとこの時間には開けているパン屋がけっこうある。
『焼きたてのパンを供給するのが彼らの仕事』だから。朝の遅いパン屋というのは考えられない。多くの場合、パン屋は教会の近くにあったように覚えている。
ロンドンでも、私の行っていたパン屋は朝が早かった。朝7時頃には店が開いていて、故ダイアナ妃殿下にもそこで何度かお会いしたことがある。
その国の人の味覚というのは、だいたいパンを食べてみて、塩の入り具合をみると、イッパツでわかる。ウィーンのパンは、イタリアやフランスに比べてすごく塩が多い。日本はアメリカ式に甘くしている。
アメリカのパンは、『パレット』だから、小麦の香ばしい香りも何もない。ピーナツバターを塗ったり、別の味で覆い隠して、食べる画用紙のような真っ白いパンがほとんど。ブラウンブレッドでもよい香りはしない。
フランスのパンは、カリカリの外側が美味いので、そこが多くなるようにバゲットは考えられたのだろう。そこに香ばしい小麦の香りがしないバゲットはまがいもの。そして、なかにはふぞろいな大きさの空洞が香りをためて、やわらかい。
そこからすると、日本には乳化剤、添加物盛沢山の『しっとりともちもちな脱脂綿』のような、小麦の良い香りのしないパンが多い。その反動なのだろうが、一方で『ハード系』と呼ばれるヨーロッパでも中東でもインドでもお目にかかったことのない不思議なパンがある。
『先祖は足軽で、塹壕のなかで干飯言い(ほしいい)をガリガリ齧っていたような人はいいのかもしれない』。私はあれはダメなのです。シェークスピアは『航海を終えた後の、残り物のビスケットのように硬い』と言ったが、そのたぐいである。
ようするに、捏ね方も発酵も下手なのだ。私は週に2回、家の全員のために(15人ぐらい)パンをフランシスと焼いていたが、オーガニックの全粒粉で天然酵母で、そんなに固い焼き上がりにはならなかった。時間が経つと固くなるので、うまいのは焼きたての朝から昼食まで。薄く切ってあぶって、なんとか2日目。3日目は天候によっては木片のように固くなる(笑)。3日目にはなんだかんだ言って、町のパン屋から買ってくるのがいたり、パスタにするひとがいたりする。家の主人は『もったいない』とバリバリ食べる。
歯が丈夫なんですね(爆)。日本でもそういう固いパンの店の店主は、古代インカの水晶の頭蓋骨みたいな頑丈そうなアゴと頭骨の人をよくみる。
このところ、私は夕飯をづっと抜いている。夜は果物だけにしたりという日がけっこうある。体調は悪くない。朝は蕎麦にして、シッカリとったりして、昼は米にする。夜はフルーツやサラダだけ。
どインド屋が『さいきんお米の人になっていますね』。じつは、その店のナンの小麦粉の選定には知恵を貸している。夜と昼では小麦粉が違う。昼は『パンっぽくあがる小麦粉』にしている。そこはあまり『砂糖を足していない』が、インド、ネパール人にも日本人の砂糖好きは見透かされていて、ずいぶん甘くしたナンを出している店が多い。
数年前撤退した近所の別のインド屋では、ナンをずいぶん甘くしていた。私は『甘すぎ』と言っていたが、客は『ここのナンが一番おいしい』と言っている人が多かった。近所(10kmのサークルの中で)でその店のナンが一番甘かった。
蕎麦はつゆを自分で作り、蕎麦は国産小麦のオーガニックのもの。べつにそれで、飽きない。万願寺とうがらしの刻みとかを入れ、ある時は黒ゴマ、ある時は白胡麻、大根おろしや納豆などて変化を付ける。水晶頭蓋骨用のパンにジャムよりは、自分にはしっくりくる。