英国で趣味の乗り物を入手する時、それがクルマなどの場合はその車両の歴史をまとめた物が付いてくる。
自転車においても、その自転車を買った時のレシートなどがあるものはおおいに珍重される。
また、部品の入れ替えがあった時は、その記録、古い交換した部品も一緒につけて次世代に渡す。また引き継いだ人は、オリジナルの部品を集めたりして、次の世代のレストアの仕事がやりやすいように配慮して手渡す。
つまり、自分のところにある間に、『よりそろえてゆく』やり方が普通だ。
それがないものは、英国のオークションでは3分の1ぐらいの価格になることも珍しくない。
そもそも、英国だとオークションにものが出る時は持ち主がみまかったりしたあと、コレクションの維持、保守に困った家族が出す場合が多い。通常は持ち主が『君に、これを』と相伝させる。つまり、次世代を育てることが、そういう趣味のものを持つことの責任としてついてまわる。
たまにネットオークションを見ていると、自分のところから出た古い車両が出ているのを見ると心中複雑だ。中にはバラバラに『とさつ、解体』されて、部品として売っている場合もある。
持ち主本人がオークションにかけるというのは、『その車両がどういう人のもとへ行っても良い』という責任放棄のことだと私は理解する。
今もちょうど、RRA、レコード・エースが残り一日でヤフオクに出ている。クランクが一直線になっていない。コッタ―ピンを左右で逆向きに入れているのだが、うちからそんな風に出て行ったはずはない。ヘッドクランプは前後逆についている。これでは、ステアリングコラムの後方に割りが入っているので、ステムはまともにとまらない。知らない人がそのまま乗れば危険だ。
うちから渡ったレコード・エース3台がそういう具合で、人手を転々として、そのうちの1台は塗り替えまでされていた。98%塗装とオリジナルの転写シールが残っていたのに。
まあ、日本の状況をみるにつけ、古い自転車を持って、グループで集団走行をするなどというのは、まだまだそこまでの意識が出来ていない。よそ様の国の車両を集めて、その見せびらかしの場をつくるというのであれば、そうしたイベントはむしろやらないほうがよいと思う。自分の国のもので、未来の歴史となるものをやったほうがためになるだろう。