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Channel: 英国式自転車生活
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何のために製造するのか?

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この20年ぐらいで、自動車関係者や自動車メーカー、モーターサイクルメーカーが自転車を同じ名前で販売するというケースがものすごく増えた。最近では日本の大メーカーのスポーツカーのブランド名のロードレーサーもでているようだ。

19世紀末から20世紀初頭に創業の自動車メーカーの多くは、もともとは自転車屋だった。それがモーターサイクル製造業に行き、やがては自動車に行き、自転車部門を切り捨てた。

なぜかというと、自転車は手間のわりに儲からなかったからで、大きい金額の動く自動車販売にみんな行きたがった。100年ほど前、アメリカには信じられないくらいの数の自転車メーカーがありましたが、ある時、安売り合戦の果てに値崩れして、そのほとんどが消滅した。アメリカで自転車製造に戻ってくる人が現れたのは、『バイコロジー運動世代』が1980年代に創業したところがほとんど。


プジョーなどももとは刃物屋で、それが時代に合わせて自転車をやりはじめた。そしてモーターサイクルをやり、自動車をやった。いまはフランスに自転車生産拠点はないはず。一方、イタリアのビアンキは1時期はモーターサイクルもやり、自動車もやったが、自動車とモーターサイクルの方は根付かずやめてしまった。


日本でもミヤタもブリジストンもモーターサイクルを一時期やったが、立ち消えた。


しかし、1910年代から1970年代までは、『自転車をあえて製造しようとする自動車メーカー、スポーツカーメーカーはほぼ存在しなかった』と言ってよい。クルマは売れていたし、自転車は手間がかかる割に儲からない。また、そうやすやすと参入す出来るほど、趣味の自転車のレヴェルは低くなかった。

ロールスロイスのエンジニアの作った折り畳み自転車、ヴイッカートンなどはポニョポニョで乗るに堪えなかったし、航空機のメーカーがからんだ英国の自転車メーカーは破損事故が起きて死者が何人も出て、撤退を余儀なくされた。日本の大手自動車メーカーもある自転車メーカーを買収してやりはじめたところがあったが、やはり事故で死者を出し、いまは自動車メーカーの系列の湯沸かし器メーカーになっている。誰ももとはそこが自転車メーカーだったとは気がつかないだろう。

1980年代に、けっこう、日本の自転車関係者が日本の技術を隣国に売り渡した。ようするに『金の卵を産むニワトリ』を自分一代で隣国にあげてしまった。実際、それはそれまでの、何代にも渡る人たちの努力の蓄積な財産なわけだが、それで、先祖伝来の努力も、これからの子孫の仕事のかても、すべて使い尽くしてしまったに等しい。

いまだにそれをやった人たちは活動しているが、私はそういう人たちを認めないし、名前が出ても『聞いたこともない、とるに足らない人物』として知らないふりをする(笑)。


当ブログへ来ている方にも、お付き合いがある人がいるようだから、多くを語るまい。

かくして、隣国でOEMで安く自転車が作れるようになると、『転写シール・エンジニアリング』がはびこるようになった。この部品とこの部品で、このくらいの工場出荷原価で、と丸投げするとやってもらえる。あとは転写シールを作らせるだけ。


私も2005年ぐらいに何回も言われた。『R&Fさん。自転車のほうで名前が知られているんだから、転写シールを作るだけで一儲けできますよ。それで、潤ったら、MOOK本は600万円もあれば作れるんだから、自分で雑誌を出せば、そこでさらに儲けられる。』これは、『物陳列系雑誌の編集長』たちから何人にも言われた。


『オレはプリンシプルは売らない。』と答えていた。


W.O.ベントレーは恒常的に金がなかった。貴族のドロシー・パジェットはブロワー付きのレースに勝てないティム・バーキンには出資したが、W.O.には投資しなかった。アストンは何度も買収され、フルッチョも自分の会社の支配権を失って、法廷でこんなやつらにクルマのことはわからないと声を荒げた。

ノートンも栄光はあれど資金もなく、ストレスの中に生きてついに病を患った。


こうした乗り物のすごいものを作った人たちは、ことごとく貧乏か破産か、どちらかで終わっている。モーティベーションは『儲け』ではない。


アレックスが、
『自動車メーカーの名前がくっついた自転車はすべて◎×だな。Do you agree ? 』
と眼玉をギョロっとさせて言った。これは彼特有の語法で、過激な独断に賛同を求め、その話している相手の本音を探り、その人の頭の回転をチェックするというお決まりのやり方だった(笑)。

私は、こたえて、
『それを言うと、自分も気まずいんじゃないですか。貴方のROVERも◎×なんですね?』
彼は一瞬困惑して、
『ウン。あれのことはすっかり記憶からスリップアウトしていた。まあ、あれも出来の悪い親戚のようなもんじゃ。そういう親戚はどこのファミリーにもいる。そうではないか?』
御大自身の言葉なので、私を恨まないように(爆)。


このごろでは、上は220万円ほどの自動車メーカーの自転車もあるようです。下は9万ぐらい。町で見かけると、一応細部は観察します。思わず自分のものと見較べてしまう、左5枚は私の車両。右3枚はイタリアの超車。さすがにレースで鍛えられたメーカーのものはシャーシーのように頑丈そうだ(笑)。

左から4枚目の私の車両は一応、足回りもブレーキもヴィツィエンツァのCampagnolo製ですが、右3枚のものに、イタリアの部品は見あたらなかった。もしかしたら、そういうイタリア製があって、私が最新部品に無知なだけかもしれません。エンツオ・イル・マニフィーコが生きていたらどういう感想をもったか興味があります。

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