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Channel: 英国式自転車生活
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段数の呪縛

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もう10年以上前ですが、エリック・ザベルがスプリント勝負でギリギリの勝利を獲得した後のインタヴューを観た。写真判定を要するほどのぎりぎりの勝利だったのだが、彼はインタヴューで、

『ギアが1歯足りなかった。フロントのアウターをあと1歯大きくしていたら、あれほど苦しい勝負にはならなかったよ。限界まで回して筋肉は悲鳴を上げていた。千切れそうだった。あとゴールが3m遠かったら負けていただろう。』


というようなことを言っていた。レースの世界では、それほど伯仲した実力者の間では1歯、1Tが重要になる。12Tと13T,あるいは52Tと53Tの差が勝ち負けを左右する。

一般のひとのホビーライドやサイクリングでそれほどのことは起らない。プロは場合によっては、数千万円、数億円の収入差になってくるので、重要な話なのだ。我々一般ピープルには関係ない(笑)。


私などは登り坂が来たらシフトダウンして、追い風や下り坂でシフトアップするぐらいで、ダレ走りの時は、下り坂でシフトアップすらしない(笑)。『ゆっくり、事故なく、若くはない』と10回唱えて坂を下る(爆)。おかげでいまだに自転車に乗っている。ヘルメット無しで半世紀以上。一方で半世紀に満たない年齢で、ヘルメットをかぶっていて落命するレーサー、全身不随になるレーサーは後を絶たない。


競技選手の場合、『他人との勝負』がからんでくるので、先のザベルのような場合、ギアの段数はこまめに、自分の微調整が必要になってくる。

昔は段数がリア5段とかに限られていたので、きわめて接近したギア比のフリーがレース用には多かった。『ローで24Tなどという楽をしたら負ける』という意識で、ローは21T,トップは14Tが多かった。平地専用では、ローが19Tとかも少なくなかった。

フリーのロー側が小さくなると、重量も大幅に軽くなったので、そういう意味合いもあった。

このあいだMTBで育った世代がロー24Tの標準フリーを使って、『変速してもほとんど変わった感じがしない』と言っていて、時代だなと思った。

私の世代は日本一周のキャンピング車でも、フロントのインナーに32Tを入れれば、リアは24Tで充分と考えられた。いまでもそう思う。四国をアップハンドルで廻った時でも、フロント・インナーは40T以上でしたから。24Tに32Tぐらいで、じわじわ、のんびり、山道をせめるのがスタイル。このこころもちは山登りに近い。

最近、段数が増えるにしたがって、いままでの接近した競技用のギア比にリア側のローの大きめを足したなものが出てきたわけだが、現実的に、ツーリングでそこまで細かく変速を繰り返すことは不要だと私は考えている。

レース車両の変速段数が増えて、レースの距離が伸びたのか?というとむしろ逆で、ツールの総長も、リア5段時代には5000kmを超え、6000kmに迫る長いことが多かった。それよりももっと前は、ワンステージが400kmを超える場合すらあった。

面白いと思います。いまのツールやジロにかつてのようにワンステージ、300km超え、400km超えというのをいくつか入れたら。車両もいまのままではダメだろう。しかも、サポートカーを一切禁止にして、壊れたら選手が自分で直すというかつてのルールを導入し、最初から最後まで『車両の目的別の乗り換えを許さず、ただ一台で走りきること』としたらどうか?車両の姿も部品の設計も大きく変わるだろうと思う。


たとえば、バスもあまりこない道志の真ん中ぐらいで、ツーリング車の完組ホイールが壊れたらどうするのか?モン・バントゥでリアホイールがつぶれて、自転車ごと道路に叩きつけていたのはフランスのローラン・ジャラベールだったか?ツーリストには愛車に当たり散らして地面にたたきつけるような真似はできない。我々にはそれ一台の旅道具ですから、数分でサポートカーが来て代車を出してくれるようなことは決してない。

そういうルールにした方が、一般の人たちに向く、よいツーリング部品が出てくると私は思いますね。

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