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Channel: 英国式自転車生活
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フリーダム・マシーン

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こどもの頃、自転車というのは世界を広めてくれる『フリーダム・マシーン』だった。

しだいにそれがバイクになり、自動車になり、、しかし、それが最初に手にした自転車ほど『自由に直結した乗り物であったかどうか?』それは疑わしい。

自転車からバイクへ移行する人は多そうだが、私の世代で自転車に根を生やした人は、なかなかスクーターにすら軸足を動かそうとしなかった。

日本では、エンジン付きは、常に『誰かに管理されている』、そこが鬱陶しい。税金もある、車検もある、保険も必要、車庫や駐車場の金もかかる。整備は法定。さらに道路では常に他者の指示にしたがって走っている。『速度を落とせ』、『ヘッドライトを点けろ』、『徐行しろ』、『トンネル内ではラジオを点けろ』などなど。

あげく違反での罰金。ひのたまはちおうじには、都内でも数少ないラゥンドアバウトがあるが、そこで『一時停止の時間が短かかった』とか難癖をつけられて7000円の罰金を取られたりする。『オマエは英国の本家ラゥンドアバウトをいくつ通過したことがあるのか?英国でのラゥンド・アバウトの理論・原則と法律を知っているのか?』という気がしてくる。

1本歯の下駄のようなブラシのついた、電池を持たない自動車のおもちゃを走らせているのと、本質的にあまり変わらない気がする。『雨に濡れない』というのと『ドア・トゥ・ドア』ということのほか、あとは荷物がたくさん積める以外に、あまりこころがときめく利点を最近は感じない。

バイク、スクーターは本質的に『管理されるわずらわしさ』は自動車とあまり変わらない。保険も税金も整備も、駐車場探しも、めんどくさいのは自動車と同じ。

英国の車検、MOTを知っていたら、多分、日本の車検制度は『クルマ文化の維持に向いていない』というのがわかると思う。

たぶん、ロードレーサーに乗ることへの敷居が下がると並行して、自転車に『自動車的な価値観を持ち込む人が増えた』気がする。これは知らず知らずのうちに、自動車人の『誰かに管理されるわずらわしさを気にしない人』がけっこうな割合になってきている気がする。

私は『自分で理解できない乗り物には絶対に乗りたくない』。なにか不具合が起こる前兆が自分で把握できない乗り物を、自分一人で乗ることに我慢が出来ない。『携帯電話一本で修理を呼ぶ』というのは、他人への依存だろう。それは『フリーダム・マシーン』と呼ぶにふさわしくない。

一部に、なんとかして『修理はディーラーまかせの自動車のように、専門のところへ自転車を持って行き、そのメンテで食えるシステムを作ろうというグループがある』。これは『他者の収入確保体系に自分が取り込まれること』なわけだが、私などは『フリーダム・マシーンの自主独立を脅かすもの』と感じられる。

私のように感じる人はアメリカにも、オーストラリアにも、ヨーロッパにもいる。

たまに『 R&Fさんはヘルメットをかぶらないんですか?』と聞いてくる人がある。『かぶりません。かぶるかぶらないは乗り手の自由だ。私にとっての自転車はフリーダム・マシーンだから。もし、それが必須のものだと言うのであれば、自転車より確実に止まることが出来ない、また衝突の危険性がはるかに高いフィギュアスケートも、ゲレンデスキーも、すべてフルフェイスのヘルメットと頸動脈を守るネックプロテクターを義務化するべきだ。飛び込み前転のように落車する前傾の強いロードレーサーはかぶるべきでしょう。私はアップハンドルだし、路上でスピードで競い合うことをしませんから。』と答える。

現代の『前輪がグリップを失って流れて転倒するロードレーサー』や『前へ投げ出されるように転倒し、自分の足がペダルについたまま自転車ごとデンぐり返しをする現代のロードレーサー』ではヘルメットだけでは身体を守り切れない。首と背骨を守るプロテクターでも付けたらよかろうと思う。それはここ数年の間に日本で起こったロードレーサーの大事故の数々をみればわかる。ビンディング・ペダルは左右の足を同時に、瞬時に外すことがほぼ不可能だ。だから首をやってしまう人が実に多い。これは1930年代から1960年代のレーサー自転車では聞いたことがない事故のパターンだ。

『スピードを競うというのは相対的な世界で、相手と張り合っている、あるいは時計と張り合っている』。ほんもののフリーダム・マシーンは自分の自由な存在を楽しむためのものだから、競争する必要がない。無理をしない。スピードによる危険を避けて走る。この絶対感覚は『人生も一度限りの旅』、『自転車に乗るのも一期一会の旅』と考えているサイクル・ツーリストはみなさんご存じのはずだ。

自分のペースで無理なく坂を上る。山の空気と自分の呼吸と自分自身がひとつになる。存在を深く味わう。

今はうぐいすが盛んに鳴いている。今年は、もう早々と藤の花が咲き始めた。『旅する自転車乗り』はそういう自然を深く味わうので、みずからの健康や自分で動ける自由を、何よりも大切に考える。できれば、最後の最後まで、人生行路でその楽しみに浸っていたいと思う。そういう人はスピードのため、他人より速いことを証明するために、みずからの肉体を危険にさらすような走り方をしないはずだ。

そういう哲学で40年も50年も60年も、寝たきりになったり、自転車をあきらめないといけなくなる大事故を起こさず自転車に乗って来た先達たちに『ヘルメットはかぶらなくていいんですか?』などと駆け出しが言うのは大きなお世話だ(と週末の大放言をしてみる。笑)。

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