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Channel: 英国式自転車生活
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ブラック・キャブ

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私は英国にいた時、金曜日にほぼ必ずブラック・キャブに乗っていました。だいたいパブがカンバンになるころまで彼女と飲んで、そこからブラック・キャブで彼女を自宅まで送り届け、自分はそのままキングスクロス駅までタクシーに乗って、最終列車でケンブリッジまで帰る。あるいはノッティングヒルゲイトの自由に使ってよいよ言われていた『会長室』に泊まった。

まあ、その会長室に彼女と帰るわけには行かなかった。足音を忍ばせて2人で以前帰った時、なぜか翌日支配人の知るところとなっていた(笑)。

『会長の好みで、壁は極端にうすくなっておりますからな』と支配人のロバートは笑いながら言った。

アガサ・クリスティのミス・マープルの映画などでも、『牧師さんは夜中のXX時ごろにホテルの部屋に帰ってきていたわ』などというシーンがよく出てくる(笑)。英国人はよく聞いているんだ(爆)。これが自宅だともっとすごい。

英国人でオペラグラスとかバイノ(双眼鏡)を使って窓から道行く人を見ている人はけっこういる。

ウェールズのほうでの話。私の友人の知り合いがFURINをしているという話を聞いた。
『それがね。村中の人が、その2人のFRINを知っているのよ。知らないのはその当事者たち4にんだけなの。』
『誰もその4人にバレてるって教えてやらないのかな?』
『教えるわけないじゃない。村中の人の娯楽なんだから。』

まぁ、そういうわけで、ブラック・キャブにはなんとなく思い入れがある。あれがだんだん、日産のエンジンになったり、ボディが直線的になったり、また丸っこく戻ったり、黒以外のものが現れたり、ついには普通の乗用車型のものが増えて来たり、運転手の資格がとりやすく甘くなったり、そうなるたびにロンドンらしさが失われた。

昔の、独特なディーゼルのアイドリングの時の振動。飛ばしている時は、巨大なカブトムシが飛んでいるような音の響きがあった。それらは日産のエンジンになってからなくなってしまった。

免許を取るために、スーパーカブにLの文字と地図を付けてロンドンをぐるぐる回って道を覚えている未来の運転手たちがいた。試験にはAからBまでの道筋を訊かれて、最短距離を即座に答えられないと合格できなかった。今は道を知らない運転手がけっこういる。

私ももうちょっとヨボったら、チェスタフィールド・コゥトを着て、銀の握りのステッキを持って、運転席をコツコツと叩いて、行く先を教え、知らなかったら完璧な英国英語で道案内をしてやりたい(笑)。

チャーチルの時代の、彼がよく乗っていたタクシーは、運転手の反対側のシートがなく、そこにスーツケースが置けるようになっていた。つまり、リッドを開け閉めせず、すぐさま荷物をクルマに積み、また降ろせた。18世紀~19世紀の馬車の感覚なのだ。

こういう感覚は、いくら工業化が進んでも『伝統文化とその感性の問題だからコピーできない』。

英国のヒルマン・ミンクスに乗ると、後席が馬車と同様、かなり前席より高い。『そういう風に作ろうという感覚』は、馬車はほとんど公家や華族ですら個人用をあまり持たなかった日本では知る由もない。

クルマへの線引きも馬車から。エンブレム・紋章を入れるのも馬車から、内装にウッドパネルと革を使うのも馬車から。馬車や自動車は表で使うものだからホコリがつく。だから革がよく使われた。日光で熱せられたり日陰で冷えたりするので、ダッシュボードにはバーウッド(Burr、コブのある木からとる)虎斑、最上級には鳥の目玉がたくさんあるような、『バーズアイ模様』のウッドパネルが使われた。日本では『身分の高い人の使う木材は柾目だろう』と、ヒビがはいって仕方がないものを職人技で抑え込んで使った。それはやはり馬車を400年、500年、プライベート・トランスポートにしてこなかった差が出ていると私は思う。

一昨日、ジャパン・タクシーというのに乗った。ロンドンのブラック・キャブの焼き直しだが、半世紀以上遅れて、やっとその形状に行き着いた。

これと同じことは、最近の自転車のハブに組み込まれた発電機でもいえる。あれを英国では『ダイノハブ』というが、英国では今から80年以上前に普通にメーカー車に使われていた。しかも、上級モデルはバッテリーと切り替えが出来た。今の日本のハブ・ダイナモは雨が染み込むのに弱く、けっこう不具合になるものをみた。しかし、英国のスターメィのものは50年、60年前の、雨ざらしになっていたものがいまだに作動する(笑)。うちにあったフィリップスなども80年超級だったが、まったく問題なく点灯した。

さらに、英国のブラック・キャブは買い物の荷物が多くなった時、昔は『これをどこそこの家まで運んでおいてくれ』と頼むことが可能だった。今はどうだか知らない。最近は手呂があるから出来なくなったのではないか?

日本だったらネコもヒキャクも大反対するだろう(笑)。

さらに、アイルランドに行くと、ブラック・キャブは補助椅子もでて席数があるので、『ミニバスのように、乗り合いをする』。これも日本でやったらバス会社が黙っていないだろう(爆)。

つまり、こういうところにかかっている規制が、必ずしも『より大きな社会のシステムとして、うまく機能しない』原因となっている場合が少なくないと、私には見える。

一方で『住み分け』でどれほどうまく行っているのか?英国なら、ファーストクラス郵便なら、必ず翌日の朝届けられる。これは、シャーロックホームズの昔からそうなのだ。日本では『朝食の前に届けられるなどと言う保証はない』。私は朝食の時、朝一番の手紙を朝食の後で読むところから一日が始まったのを懐かしく思う。

その英国の郵便局も、なんと自転車の郵便配達をやめた。道路状況が自転車にとって危険になったからだという。

ロンドンのブラック・キャブも変り、ロンドンのどんな道でも切り返しせず、一発でUターン出来る、驚くほど小さい最小回転半径はジャンパクシーにはないのではないか?

やがては『尼尊』の即日配達でドローンが使われ、歩行者は事故機の頭への直撃を避けるため、外出時は必ずフルフェイスのヘルメットをかぶり、スマホの情報がすべて、ヘルメットのヴァイザーの内側に表示され、ヘルメットの中は素晴らしい、真に迫った音響の音楽が鳴っていて、後ろから音もなく接近してくるEVがいると、AIの音声で危険を知らせるアナウンスがヘルメットの中で流れる。

タクシーに乗る時も、歩行時にすでにフルフェイスのヘルメットをかぶっているわけだから、タクシーの中でシートベルトを締めてくれとか、そういうアナウンスは省略されるかもしれない(笑)。

そのヘルメット姿の人が危険かどうかを運転手が見分けるため、『電子認証システムが取り入れられ、手首にICチップを埋め込み、タクシー料金もそこから自動引き落とし』。カードをなくす心配もない(爆)。

あ~~、ワクワクするほど科学技術の進歩は、ある人たちには楽しい(爆)。

私は?マラッカ・ケーンのステッキに銀の握りでタクシーの間仕切りを叩き、『ストランドのシンプソンズへ』と言っていたいものだ。

* Simpson's in the Strand でHPが一発で出ます。

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