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Channel: 英国式自転車生活
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役にたつ、たたない

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めずらしく、週末はお呼ばれで音楽会へ行きました。その場所へ行くのは2年ぶり。

年末にあと3回呼ばれているのですが、そのうちの2回は同日の同じ時間。そのダブっている2回はどちらも義理がある。『困ったな~』。出演者は知り合い2対1で、片方へ行けば2人に義理が立つ、もうひとつは1人に義理がたつ。

昔なら『必殺鉛筆ころがし』で決めたところですが、今はYoutubeがある。『共演者は?』とチェックを入れた(笑)。こういうところはスゴイですね。さすがはインターネット時代だ。

昨晩は前半は生硬で、降り出した雨で弦楽器も鳴りが悪く、前半だけで帰ろうかな、と思った。ホールの出入り口まで行ったところで、知り合いに似た人が遠くに見えたので、思いとどまって打ち上げまで居た。

後半は良かった。コンサートは『生もの』なので、こういう立て直しがあるから面白い。

正直な話、私の人生はずいぶん考えていた道からずれてしまった。マサチューセッツ工科大学から数年前に出た本に自分で描いた図版を入れたら、共著者から『絵が描けるとは知らなかった』と言われた。

ほんとうはそっちで食えないかな?と思っていたのだが、無理だろうと、英語の教師でもやりながら絵でも描くか、というもくろみだった。

そうしたら、『英語とフランス語ができて、美術の心得があって、機械がわかって、取扱説明書の英訳とか部品の展開図が描けて、写真ができて、英文カタログなども作れる人』という求人があった。『画廊もいくつかあるので、ゆくゆくはそちらの管理も任せる』という甘い話があって就職してしまった。それ以来の苦しみ(笑)。

もくろみはずれもいいところ。会社に夜学で簿記の学校まで行かされた。人生は不自由なり。

この就職は英国の友人たちには意外だったらしく、『どうして美術関係の本の出版社とかにゆかなかったのか?』とみんなに言われた。しかし、いま、日本の書店で画集らしい画集を置いているところはない。その意味で読みは外れていなかったと思う。

アレックスは『この男に日本側の窓口役を頼みたいのでスタッフの一人に入れたい』、と私の紹介状を日本の会社社長あてに出した。その中に『自転車に関してはじつに深いextensive knowledgeを持っており、それだけではなく哲学者である』と書いてあった。

いまや歴史上の人、アレックスに、こういう手紙を頼んだわけでもないのに彼が自発的に書いたということだけが、私にとっての勲章だ。

『う~~~ん。哲学者ねぇ。詩人じゃないのか。』
『ワッ八ッハ。詩人か。』
『いや、哲学の論文で表彰されたことはあるが、本は出したことがない。しかし、詩集は2冊出しているよ。』

それは、インターネット時代よりはるかに古い時代の話だから調べても出てこない。アメリカで出たその本は2年目かそこいらなのに、すでにプレミアムがついて1冊3万7千円のものもある。初期詩集はたいへん値打ちがあるかもしれない(笑)。『捨てたヤツは大いに悔しがれ!』(爆)。日本で出た自転車のものもそろそろ3倍付けている古書店もある。

つまり、私にホイール組ませたり、部品を探させたりしているのは、画家に石を割らせたり、レンガを積ませているに等しい。私にはデザインをさせたり、フレームとキャリア、その関連部品を作らせるべきなのだ。

ある、楽器の修復家が、『 R&Fさん、たとえば、億~10億の桁のヴァイオリンのヒビを1本消せれば、数千万円価格が変わりますから。でも、その手間は、自転車一台レストアするのとあまり変わらないと思いますよ』。

人間の総体というのはなかなかわからない。

私のゴッド・サンの父親は、つぎの国王の戴冠式では王冠を載せる役になる可能性がある。まわりがみんなそこそこの地位になっているのに、油親爺になってヤスリがけをしている我が身を考える(爆)。

『クリスマス・ソングを聴かずに年末まで』などと書いていましたが、昨晩のコンサートの最後には、アンコールの時に聴衆に楽譜が配られました。『みなさんご一緒に』。

讃美歌の楽譜。『Why not』と言いつつ歌う(笑)。それがお経であっても唱えただろう(笑)。

芸術関係というのは、利益を出そうと考えず、『やらざるをえない』気持ちに突き動かされてやっているわけで、ダ・ヴインチもミケランジェロも、ゴッホも、バッハもモーツアルトも、彼らの使う分だけ入ってきて、仕事が続けられて、計画を実現できれば良い、と考えていただろう。

それすらも難しく、すべてが自分の頭の中と誰が評価するともしれないことを紙の上に書いているのは詩人だろう。その意味で自転車を作っているなどというのも、儲かりもしない詩人の仕事に近いのだと思う(笑)。

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