「ハーフチェンケースなど役に立たない、裾はやっぱり汚れる」と言う人もいるかもしれませんが、私はハーフチェーン・ケースの最大の役目は、汚れ防止ではなく、ズボンの裾がフロントスプロケットとチェンに噛まれて、身動き取れなくなるのを予防することだと思います。
これは私が重量運搬車などを日常乗りしていた時、何回かズボンのすそをとめていたのがはためいて巻き込まれ、破いた経験からそう思います。まったく無駄ではない。
別の記事で書いた「ほかがすべて出来ているのに、チェンケースだけが決まらない」車輌のチェーンケースを、倉庫でひっかき回していまして、30枚ほどあった古いもののなかで、2つに絞りました。
現在日本で手に入るハーフチェーンケースは、フロントギアのサイズが極端に小さい、『アジア製コストダウン規格』のもの用なので、フロントに42~48Tを使うような本格自転車には転用できません。
しかも多段ギア用となると、かなりのチェンの横移動量を考えねばならない。
ハーフチェンケースはその意味けっこう難しいのです。自転車のサイドヴューのかなりのパーセンテージを占めるので、これが大量生産の安物感漂っていると、すべてがだいなしになる。
選ばれたのは第二次大戦前の「アイヴォレット」と「デュネルト」。たぶん、日本にはそれぞれこの1枚づつだけでしょう。デュネルトはたぶん日本のハーフケースの「元ネタ」だと思います。古い英国の自転車のディーラー用の雑誌に同じものが出ていました。
デュネルトはバイクも作っていたことがありますが、もとは製鉄業だったらしい。そのせいか、サビを落として磨いたら、なんともいえない鉄味とすずメッキが出てきました。このままクリアをかけて古い車輌に付けると貫禄が出る。眺め透かして、アイヴォレットはそのままクリアーをかけて私の古い車両につけ、「デュネルト」のほうは半ツヤの塗装をして、こっちを使うことにしました。
こういう嫌味のないカタチのケースは日本では絶滅した感じがあります。