ここ25年ぐらいで、身体能力ということが、世界的にずいぶん表面へ出て来た気がしてならない。各種の遊びでも、「こんなことまでやるんだ」というようなのをよく見る。レッドブルの自転車の契約選手のトライアルの映像などを見るとビックリする。パルクールもそうだし、スケートボードもそうだろう。ダンス・踊りのほうもけっこう進化している。
エンジン付きの乗り物も、昔とは置かれた状況が変わってきているので、レイルトン・スペシャルのジョン・コブのように、ぽっちゃりとした無口な肥満体で、超絶の大馬力のエンジンと度胸でもって記録をねじ伏せるという時代でもない。
シューマッハも自転車を持っていて、それでトレーニングしていたことはあまり知られていない。
私はこの傾向は強まるとみている。インターネットで誰か有名人の名前を検索すると「SEI-KEI疑惑」というのがけっこう出てくる。小中学校の集合写真まで探しだして暴かれるんだから(笑)、もう『エジプトの王家の谷の盗賊トラップ』みたいに、卒業アルバムに手を伸ばすと一枚板の岩天井が落ちて来るとか、本棚からアルバムを抜くと砂が部屋にあふれてきて、砂で生き埋めとかしないと、秘密は守れないだろう(笑)。関わった医師と看護婦はピラミッドの下に埋める(爆)。
そこで、誤魔化せない『身体能力』というのが重要になって来たのではないか?ある意味、古代ギリシャのようにもどっていると言えるのかもしれない。
さて、一般の人は、そうかといって、フィギュアスケートとかですごさを演出するわけには行かないし、器械体操も難しい、そこでジョギングと自転車のロードとかが、集中練習をしなくともなんとかなりそうだとサイクルジョギングなどになったと私は見ている。しかもジョギングと自転車は、そこそこ都市部でも人の目に触れるので、自己顕示欲も満たされる。
しかし、決して、それは「蘊蓄」による『説得』ではないし、また、自転車の上でサマになっているということは必ずしも極端な絞り込みを意味しない。『健康に留意している』ということで歳相応でかまわない。このサマになるというのは、なにも名品に乗れということでもない。
いまから20年ほど前、若い女性2人が、「サイクリングに行ってみたい」、それも「輪行をしてみたい」というのでお連れしました。その時、「僕も僕も」という友人が付いて来たのですが、プラットフォームの待ち合わせ時間に登場しなかったので置き去りにした(笑)。
ビックリなのですが、その彼、サドルバッグに一本数万円もするワインのデミボトルを入れ、(それも紅白)、輪行中に割ってしまわないように恐る恐る自転車を担いで、急行に乗り遅れたのだという。私は爆笑した。なんというのか、ボンドのDB-5のセンターコンソールから冷えたグラスとボトルが出てくるような、、そんなことを考えたのかもしれない(爆)。
目的地で、彼は追いついたのですが、輪行用に持って歩いている工具がイタリアのカンパニョーロ製であること、サドルバッグにはワインが入っていることを、『眼にヴェルサイユの星を煌めかせて』語っていたのですが、女性軍は反応せず(笑)。
じつは、『マニュアルによる説得タイプのおしゃれ』の人にはこういうパターンが多い気がする。それが自分のものになってこなれていればまだしも、金無垢の時計がメッキに見えるのではなさけない。
ズバリ、右心房つらぬきの黄金の弓矢の話をしますと、持ち物に異様にこだわる人は、何かの補償行為が裏にある気がする。これは女性でも同じらしく、ある友人が、自分に自信がなくなっている時に、異常なくらいジュエリーとハンドバッグと靴を買っていたと自己分析していた。
ボンドガールのキャリー・ローウェルは普段着のジーンズに数ドルのTシャツでオーディションに行ったという。そんな恰好で行ったのは彼女だけだったらしい。彼女はインタヴューを見ているときわめて頭の良い人なので、狙ったのかもしれませんが。
誰にでも出来ることではないが、そういう勝負のかけ方もある。
HGウエルズの宇宙戦争のラストでは、突如、攻撃マシーンの動きがおかしくなり、停止した機械から瀕死のモンゴウ・イカみたいな火星人が出てくる話になっている。これはじつは自動車も同じで、乗っている人はトコブシかアワビの中身みたいなわけです。クルマは外殻で、普段は中身の人物は見えない。一方で自転車は常に『その人が見えている』。
4m道路の反対側にいたら、ブレーキがケンタウルかスーパーレコードかなんてわからないわけで、同様に、シュパーブのスモールフランジハブかアテナのスモールフランジのハブかなどわかるわけがない。見えたら目がどうかしている。異性は乗り手のカッコ良さだけを見ているに決まっている(笑)。
私は『時代は説明不要のカッコよさ』を求めているし、まず、なによりも『健康美』で勝負することを第一とするべきだろう。自転車で決められることは、他の乗り物でも通用すると私は思う。