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Channel: 英国式自転車生活
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リムの空中浮遊

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『自分でホイールが組めない素人さん』たちは「リムもカンパにしてくれ」とか「ハブはオールドカンパでないと嫌だ」とかいう人が多い。しかし、すでに生産終了から数十年を経過しているそのような部品は、

『なんらかの不具合があって売れ残っていたハズレ部品』の可能性がけっこうあるわけです。

私は、『レースも完走できない人間がカンパを使うのは恥』という入手困難時代の世代なので、こういう発言にはけっこう本気でムカっとくる。こうした不具合、あるいは『ハズレだな』というのは、

自分で組んでみてはじめてわかる。

たとえば、真円度がよく出たリムがあったとする。それに適正なスポーク張力でホイールを組み、乗れば、ころがるにつれ、きれいに順繰りに乗り手の重量+車体重量がかかり、そこへ、加速、減速、コーナリングの時、あるいは路面状況で、リムにはその『順繰りにそろった力のかかり方からはみ出た力が部分的にかかる』。

ところが、そこに楕円形をしたリムがあったとする。それを真円に組めば、乗る前から長い方の直径の側のスポークがすでにかなりな余分な力を受けているわけです。

パイプリムの場合、つなぎ目の部分がやや直線になり、そこから反対側の円周に向かう側の直径が短くなるものがある。あるいはそれを意識して、造る時にやりすぎて、つなぎ目の部分が3~4mmも表へ張り出しているものもある。こういうリムは組みづらい。

ほんとうは冶具を作って、まず完全な円に近づくようにラバーハンマーで叩いて、修正してから組むのが理想だろう。いや、自分用のホイールならそこまでやってもいい(笑)。だいたいスポークを通して、組み始めてはじめてわかる、『ああ、このリムは精度悪いな』と。

リムも保管中にどういうストレスをうけてひずんでいるかわからない。あるいは、

金属は経年で変形してくるものなのだ。

材木が経年でねじれたり、ひずんでくるように、金属も動くことはあまり知られていない。だから精密な定盤をつくる材料は10年とかの長い期間ほっぽらかしておいて、動くだけ動かして、金属の動きが止まってから最終加工して仕上げる。

私はリムも作ってから数十年の間に、製造時の残留応力が表へ出てくると考えている。

だから、『生きの良い出来たてのマビックやアンブロシオでさっさと組んで使い始めたほうが賢い』のだ。

ホイール組みは、みんな左右の横ぶればかりに気をとられるが、ほんとうは縦ぶれにこそ注意を払うべきだ。真円に近いリムが『空中浮遊』しているように、スポークを張る前から、リムが土星の輪のようにハブのまわりにきれいに浮かんでいるイメージ。そこからブレをとり、張力を徐々に上げて行く。

このリムの空中浮遊状態が上手く作れたホイールはすんなり組めるし、長年にわたって狂わない。リムだのハブだののブランドに騒いでいるうちはまだまだわかっていない。これは2番手の銘柄でも良いホイールが組めるということだ。逆に言うと、どんな名手が組んでもハブやリムが精度が悪ければダメなホイールになる。

最高の部品で組んだダメホイールというのも世の中にはけっこうある。

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