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Channel: 英国式自転車生活
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働くのは良いことか?

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バートランド・ラッセルがまだソヴイエトが出来たてだったころに訪問して、彼らの仕事に関する思想、労働に関する考え方に極めて強い反発を示した文章を残している。

つまり「彼らは肉体労働を知的労働より過度に評価し、またよく働くということを無条件によいことだと考えているふしがあるが、誰かがよかれと思って一生懸命働いたことが世の中を悪くしていることもあるのだから、こうした仕事や労働に関する彼らの思想は哲学的に考えておかしい」というような内容だった。

これは、なかなか現代の日本でも有用な議論だろう。

年末、関戸橋のかいわいで、多摩川に魚が大量に死んで浮いていました。工事のせいだろうと思うのですが、ひのたまはちおうじではよくみかける光景です。昨年は大栗川でも河岸河床工事で大量に魚が死んでいた。工事をする方にとっては仕事をするだけ、で環境にとってどうかという是非は問わない。

一生懸命働いているのでしょう。

うちの方の駐輪場は定期的に持ち主に札を付けてもらって、持ち主のいない自転車と、捨てる自転車をより分けている。そうしないと誰かが安物自転車を捨てていったりする。安物を買うような人は処分料金も惜しむ。そういう安物自転車をせっせと輸入して、日本の外貨準備高を減らし、日本の技術のある町の自転車店を破産のふちまで追い詰めている人たちも、せっせと売ってよく働いている。

紙やパルプのたぐいを作るには森林を切り開かないといけません。緑が減る。またパルプ工場の近くの河川はすごい匂いがする。水質汚染もすすむ。

新年でたいへんな厚さの広告が入っていた。郵便受けに入らず、ドアのわきに置いてあった。このぐらいの紙が1月1日に日本全国で配られるとしたら、どのくらいの森林が失われ、そこに生きる生物が行き場を失い、また河川が汚染され、燃やされるとインクと紙の燃焼で大気が汚染されるのだろう?

これほどの量のものを印刷するのに、どれほどの版下が作られ、そのレイアウトのため、作業が続けられただろう?たぶん、完全版下を作るまでに徹夜もあっただろう。それらすべての労力が膨大な環境汚染をつくっている。しかし、一生懸命夜も寝ずに働いているのでしょう。

これは原発事故のあと、『原発は運営コストが安い、嫌なら電気使うなよ』とおびただしい量のコメントがネット上に書かれていた『かきこみ隊』の存在も同様でしょう。頼まれたのか、信念からか、一生懸命働いていた。しかし、廃炉や環境回復に一国の経済が傾くほどのコストがかかることがあきらかになって今は少し鳴りを潜めた。その発言の責任はどこへ蒸発した?それでも、一生懸命働いていたのか?

たぶん中東で殺し合いをしている連中も、『世界を良くしている』と信じて疑わないのだろう。ヨーロッパでトラックで突っつ込んだ者も、本人は命を懸けて一生懸命仕事をしたというのかもしれない。

一生懸命働くなどというのは、方向性が間違っていたら有害なだけだ。

『規定時間内に終わらないのはお前に能力がないからだ』と奴隷延長時間労働を強要されるのを私は横目でずいぶん見て来た。それを言うなら、真珠湾攻撃の時の宣戦布告の英文が、大使館内で時間内に翻訳・タイプアップが出来ず、手渡した時は時遅し。結果、いまだに日本は卑怯者の烙印を押されている。

それは『能力ない連中が先導してはじめたこと』だったというほかない。その後を継いでいる連中は、汚名をそそぎ名誉を回復するために一生懸命働くがよい。

何の益があるのかよくわからないことのために働くことなどたまには一切やめて、自転車で自然の中を逍遥するほうが、たぶん、世の中は良くなる。

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