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Channel: 英国式自転車生活
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陰陽師の時代

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このあいだ京都にいたとき、晴明神社のわきを自転車で通りかかりました。ずいぶんこのあたりも変わったな、と思いつつ入ってみたのですが、偶然境内の中で携帯が鳴った。

かけてきた人は美術系の友人だったのですが、彼女一時期メールの送り主の名前に「ミツムシ」と署名するほどの陰陽師のファン。虫か式神が知らせたのか(笑)。

高校時代、写真部のメンバーに『隠明寺』という人がいて、聞けば東北の方によくある名前だと言っていた。『陰陽師との関係は?』と訊いたら、先祖はそうで途中から漢字を変えたのかもしれないという話だった。たいへん本をよく読む人で、直観力ずば抜けた人だった記憶がある。

20代の時、陰陽師の使う『六壬式盤』(ろくじんしきばん)と言うのを見て「欲しい!」と思った。会社員時代は「ものを計ったり計測したりする精密機械屋」だったので、六壬式盤とペルシャのアストロラーベには興味津々でした。

安倍晴明の時代、京の都は疫病が流行ったり、とむらいもままならず、賀茂川に流したところ、あまりに大量だったため、川が流れなくなったという記録が残っている。

そういうものを日常的に見ていたら、悪夢にうなされるだろう。

夢というものがどういうものだかよくわからず、また寝ている間に自分の意志でコントロールできないままに見るよろしくない怖い夢に、昔の人たちは恐れおののいたに違いない。

ある種の人たちには、『夢もまた現実の一部』だったはずだ。それは当時の僧侶の経歴を見ると、法然などの経歴でも『夢に~~が出てきた』と現実の事件とならべて書いてある。

またあちらこちらに疫病で果てた人たちなどがころがっていれば、生きること、死ぬることを考えざるおえまい。『地獄マニア』といってよいほどの絵巻が残っている。たぶん、悲惨な状況が日常の生活のなか、悪夢で見た場面を活写したように思われる。

陰陽師というのは日本独特らしい。意外に思ったのは陰陽師たちとゆかりの深い京都の大将軍八神社にある木像群が密教の立体曼荼羅によく似ていること。

北極星の神の木像は不動明王そっくりの姿で剣を持っている。北極星は動き回りませんが、不動明王も盤石の揺るぎない石の上にいる。禅に老荘、道教の影響があるように、密教と道教にもなんらかのお互いの影響しあったところがあるのかもしれない。

インターネット時代になって、私には占いとかスピリチュアル系がものすごく力を付けたように見える。

晴明の時代の、呪いのための木像が京都で出土しているのを見た。こういうのはヨーロッパではみたことがない。現代ではインターネット上での悪口なども姿を変えた呪いなのではないかな?と思ったりする(笑)。

ある程度、名が知れてくると、必ず、怨嗟を買うのが日本の特徴の気がする。

これは不思議なもので、私も若い時期、恨み骨髄に達するような人がいたが、そういう感情は熾火のように燃えて、自分自身のこころを焼き、サビのように自分の中でひろがってくるのを感じた。

「人を呪わば穴二つ」とはよく言ったものだ。ヨーロッパでは人に攻撃されると「彼らが攻撃しているのは私ではないから、自分は平気だ。真の自分はここにいる。神様はちゃんとご存じ」という。

そうした陰陽師の助けを借りたくなる世界では、人はなるだけ目立たないように、恨まれないように、うらやましがられないように、とひっそり消極的に生きるようになるだろう。

それかあらぬか、良い言葉が残っている。

『仏も褒めず、閻魔もとがめず』

それでは何のために生まれてきたのか、自分の役目は何なのか?わからない。

ある流派の武芸のところでは、『姿が見えず、何ものにも害されない』という仏尊を奉じている。実際、武家の屋敷では表札を出さなかった。敵に居場所を教えているようなものだから。また、名前も育つにつれて変えたりしている。

これは面白いことで、たぶん10代の時の私と、30代の時の私、現在の私は、成長して別の人になっているのだと思う。その少しづつ変わって、変化熟成を他人のうちに認めない人は、たまに会えば、10代の時、そのままだと誤解している。

ある自転車店の店主が同窓会へ行くと、バカにされ「おいっ、◎×!いまパンク修理いくらだ?」と必ず聞かれると言っていた。

私なら何と返そうか?相手によるだろうと思うけれど、
「オマエはまだ泣きながら脱脂粉乳のミルク飲んでるのか?」
とか、
「微積分の方程式とけるようになったか?それが出来ないとスポークの長さ計算できないぞ」
とか言うのではないか。

あと少しで、紙の人型に名前を書いてお祓いをして川へ流す儀式が神社である。きわめて陰陽師的な儀式で、これは私は嫌いではない。

成長過程ででたよろしくないものを脱皮するように祓って、次のステージに進んでゆく。積極的に生きるためのものとしては悪くない儀式だ。

陰陽師たちの考え出したことは今の日本にも生きている。

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