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Channel: 英国式自転車生活
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歳は逆行しない

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私ぐらいの歳になると、友人の両親も後期高齢者が多い。みなさんたいへんです。

風邪とか筋肉痛ぐらいなら、寝れば明日は治っていることがほとんどなわけですが、加齢による衰えはそうは行かない。

歳をとるほどに若返ってゆくことはないわけですから、だいたいほとんどの人が40代半ばを過ぎる頃から老いを自覚する。目が見えづらくなったり、反応速度が落ちてきたり。

これは身体能力ばかりの問題ではないので、身体を鍛えていても、ある年齢で家系的な病気が出てくる人もある。私の知っている人で親子3代、50歳ぐらいからリューマチが出た人がいる。親子2代緑内障の人も友人にいる。酒も煙草も塩からいものも食べないのに親子2代ものすごく血圧が高い友人もいる。

私の母なども、若いころは薙刀の使い手だったということなどまったく面影がない高齢者である。

友人の中に知り合ってから32年間まったく体型が無変化だった人がいる。それが突然昨年から太り始めた。運動量が変わったわけでもない。大食漢でもない。たぶん代謝が落ちたのだろうと思う。

まあ、そういう具合に『階段を下がるように、ある点で、同じようにやっていてもストンと「歳をとったな」と思える変化が来る。

大多数の人たちは「忘れっぽい」というか、自分もいつかは歳をとって老人になるとか、やがては幕が引かれる「おしまいの時が来る」、などということを忘れている。

それが中年期のある時から、健康診断の結果などを見て、急にそれを意識するようになる。

だいたい芸術をやっている人と、哲学をやっている人は、若いころからこの2つをかなり意識している。自分が芸術家としての完成の道のりで、どこまで行けるだろうか?何歳までにどのくらいの絵が描けるようになるか?何歳までにどのくらいの演奏ができるようになるか?若いころから考えている。

スポーツ系はそうでもない。ラグビーやバスケット・ボール、サッカーの人が70歳、80歳になって手本を見せるということはない気がする。柔術、弓、剣術はそこが違う。そういう武芸の世界では70歳、80歳、あるいは90歳でもお手本を見せられる可能性がある。身体の使い方が武道では運動的でないので。

自転車はどうだろうか?ジャックは92歳を超えても自転車で嘱託のホイール組みに自転車通勤していた。ある種の乗り方なら体力が落ちても単距離、中距離までは充分楽しめるはずだ。

それがたとえ、片道3km、5km、10kmでも、自転車に乗っていられる健康が維持できれば、徒歩とバスしか移動手段がない人より、かなり『知的刺激のある生活圏』が自分のまわりに残せるだろうと思う。

私はそういう『高齢生活』が快適な道路状況が整えられてゆくことをせつに希望している。

ほんとうにこの国に必要なのは、時速300km以上出るハイブリッド・スポーツカーでも在来新幹線の3倍電気を喰うリニアモーターカーでもないはずだ。

ニュータウンと言われるところでは、外出しない孤独老人が多い。孤独死も少なくない。

ヨーロッパのように高齢者用の3輪自転車が、安全に走れる道路環境があったらどんなによいだろうと思う。

私は自転車に、たまに南米のマヤンのハンモックを持って出かける。注意点はハンモックをつる時は木の幹にバスタオルを巻くこと。太い木がないところでは、ビーチマットという方法もある。ポンプは持っているし。これからの、まだ蚊が出てきていない時には、自転車+ハンモック生活やビーチマットはなかなかよい。お湯でも沸かして珈琲やお茶を淹れて風景を眺める。ある程度の歳になると、そういうところでぽや~~っと過ごす時間がたいそう贅沢に思える。

あるいは自転車で出かけ、風景でもスケッチする。釣りが今日の夕飯のためでなく、自然の中で、普段の生活でキリキリ切れる寸前まで巻かれた自分の巻き過ぎたゼンマイを、ほどいてやるのに釣り糸を垂れるのと同じ。傑作を描こうなどとは考える必要はない。

さらに、自分自身の自由な移動がかなわなくなった時は、その絵を描くことのみへ、あるいは自然を眺めることのみへ、やることを移行して行くべきだろう。

私の友人で40代でNAKUなった人いますが、彼女、最後の頃は家でテレビをつけっぱなしにしていると電話で言っていた。それは迫りくる終わりに居てもたってもいられなかったのだろうと思う。

幕引きが自分の時間に追いつくまでに、いかに有意義に、かつ自分のこころに平安と満足をもたらすような趣味を持つか?これは重要な問題で、雑誌やMOOKに回答が出ている話ではない。

少なくともスポーツ的なやり方、運動的な方法では、追いついてくる寿命とのレースには勝てないだろう。

写真は作業台のわきに立つジャック・ラウッターワーサー翁。

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