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Channel: 英国式自転車生活
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まがいものはどこに立っているのか?

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私はいつもネットをぽや~~~っと見ていて、最近思うことは、日本の文化継承はかなりまずいところへきているのではないか?ということです。

私は人の個性というのは、一部のジャン・ジャック・ルソーかぶれの左巻きの信じるように「野生、天然でOK」とは考えない。同様に一部の右巻きが考えるように「ゼノファビア」(外国嫌い)にふるまっていればおのずと花開くほど単純なものだとは私は思わない。

人ひとりの個性が出来上がるまでには、迷路のような道筋を通り、取捨選択をして、そのつど深く考えて今までにない思想なり、個性に到達する必要があると考える。

「個性と言うのは既製品でありはしない」。

日本の伝統的なものは多くの場合、外国から入ってきています。それが日本的なものにこなれるまでには、多くの天才たちが日本の風土に合うように改変するなり、改良して、さらに再構築して出来上がっている。

単純な話、ある人が「日本の伝統は着物だ」と言ったとする。着物を売る人のことを『呉服屋』と言いますが、着物はお隣の国が『呉』と呼ばれた時の服を基にしている。しかし、その呉の服はお隣の国にはないし、隣国に西陣のような呉服も、日本の伝統柄のものも残ってはいない。

これは陶磁器においてもそうです。しかし、ネットオークションを見ていると、ずいぶんまがいものが出ている。半数以上が怪しい。このあいだ、ウサギが青海波のところを飛び跳ねているのがあって、神話の因幡のウサギに題材をとっているのはあきらかなのですが、そこになぜか「鯉の滝登り」が描いてあった(笑)。どこの神話だ?日本語で『難関』とか『関門』とか言いますが、それは、お隣の国では鯉がどんどん川を登ってやがては龍になると思われていた。そのところどころにある通過するのが難しいところが難関であり関門なわけです。「登竜門」というのもそこからきている。

その因幡のウサギが鯉の背中をぴょんぴょん跳ねているようなデタラメなストーリーの贋作の陶磁器が、ブランド信仰から売れている。不思議なものです。

自国の過去の知的遺産に学ぶどころか、海外から入ってきたまがいものを伝統と勘違いしている。

日本には着物がある?その絹織物は、いまや国内で2か所を残して壊滅一歩手前。最大の顧客は、『日本の絹織物は世界最高だ』と信じる中東の人たちが白い織物を買い支えている状況。国内で買う人は実に少ない。

ネットオークションで『鉄瓶』を見てみると、外国語で説明が書いてあるものが多い。金に糸目を付けずみんな海外に持ってゆく。良いものは100万円超級の価格なのでビックリする。そういうものから型を取って贋作が入ってきて、それを買ったりしている。まがいものを売って、彼らは元を取り、まがいものを使って、本物を知らぬ世代が国内に育つ。

じつはこれは自転車でも、洋服でもそういう図式になっている。国内産のフレームに国内製の車輪の自転車がどのくらい市場にあるのか?ほぼ皆無でしょう。

観光立国のプランがあるらしい。それでは「神田は『明神』で、ミシュランの本にも載った高尾山は飯綱『大権現』だが、明神と権現はどう違うのか?」。あるいは「侍はいくさの前に九字の印をきったりするが、九次の印とは何か?」。「密教では座禅と同じような阿字観があるが、禅の座禅と阿字観は何がどう違うのか?」。こういうことを英語でもフランス語ででも説明できる20代、30代がどれほどいるのか?そういうことは小学校から英語をやらせても出来るものではない。無意味なんです。

成田国際空港へ到着する。観光で成田山へ。観光ガイドにも、海外の説明書にも『不動明王はDietyである』と書いてある。それって誤訳でしょう。お不動様は神さまではない。その誤訳を正し説明する英語力と曼荼羅に関する基本知識はおありか?

そうかといって、海外のことを知っているか?というと、若者の海外への旅行経験者がどんどん減っている。

私は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などという本がベストセラーになっていた時、海外で生活し、うすら寒い気がしたのを覚えている。

日本の古武道?その古武道の源流と言われている香取神道流の門弟のかなりの数の人がいまや海外の人です。黒田鉄山先生なども海外からの門弟をとっている。この国の若い人でそういうものをやってみようという10代~20代の人の話はほとんど聞かない。

和食を自分で料理できる人がどのくらいの割で若い人にいるのか?

日本のモーターサイクルは世界を席巻したが、いまや国内のバイク人口は激減し、メーカーは真っ青。

たまたまYoutubeで日本に十数年住んだカナダ人の人のビデオを観たら、そこへの書き込みがひどいものだった。海外旅行に出ないだけでなく、国際間での最低線の儀礼もわきえまえない『自分たちには伝統があるという傲慢な思い込みの上にあぐらをかいた傍若無人なコメント』。

私には、ここ数年で『東洋版トランプ』が若い人の間で激増した感じがする。

飯笹長威斎先生は、香取の神聖な井戸で馬を洗っていた男と馬が眼の前で突然倒れて死んだのを見て、大いに畏れたという。

そうした感情のもとで、慎ましく、身を保つ、自然と共生するありかたが日本人本来であったろうと思うのだが、あまりに「科学万能主義」ですらない「技術万能主義」のもとで、かなりアイデンティティーが危うくなっている気がしてならない。

老母は歯があまり残っていないので、朝のお茶用に和菓子を良く買うのですが、この2~3週間忙しく、いつもの店へ行く時間がなかった。駅ビルの中の店で鶯餅を買ったのですが、これが「みごとなまがいもの」。味も非伝統なら、食感もいけない。うちで開けてみたら、内容物のラベルにも、ソルビトール、トレハロース、増粘剤、着色料、酵素、などのオンパレード。パン屋の作るまがいものの量産和菓子ならいざしらず、老舗を気取る和菓子屋がこのざまです。どこが和菓子か?ネットで検索すると『おいしい』とか星が4つ半とか付けているのがかなりいる。

いやはや危うい世になってきた気がする。

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