いままで当ブログでも何十回も書いてきたことですが、再クロームメッキは感心しない。
インターネット上の取引ではじつに『巧く写真が撮ってあって』、再メッキかオリジナルか判別できない場合が多い。
今月もみごとにひっかかりました。汚れた油ホコリをつけ、白く粉をふいたアルミのリングを『演出的に組み合わせたスチール・クランク』。手元に来たら再メッキのピット(あばた)がいっぱい。
「どうしてもスチールの細いクランク」という方がいて、とりよせたのですが、う~~~~~む。仕方がないから自分で使うか。
私はサビよりも再メッキのピットのほうが醜いと思う。
サビは研いで油で拭きこんでしばらくすると味になる。全体的にかなり古い40年以上経った車両なら、お茶のタンポで何度か表面を拭いて、やや黒ずんだカテキン鉄の被膜を作り油で拭いておくと、鉄瓶のような風格が付く。
『新品のようにしようと言うあさましい我欲』がかえって風合いをそぐ。
サビるのもメッキもイオン交換といってよい。鉄のメッキが錆びるのは、表面のミクロン単位の穴や傷から水分が入り、鉄とクロームと言う、2種類のイオン化傾向の違う金属の間に水が入って、一種の短絡電池を形成して、鉄が溶かされ、そこにサビは発生する。
だからクロームメッキの錆が進むと、ブクブク泡を吹いたようにクロームメッキが持ちあげられ、ついには皮がめくれるようにペリペリ剥がれてくる。
その時にはすでに鉄部分は溶かされているので、そこがピットになる。そのイオン化傾向の差をやわらげるために昔は銅メッキをかけて、その上にニッケルメッキをかけてクロームとか、銅下の上にクロームとかやっていました。銅メッキをやると廃液処理にものすごいお金がかかるので、現在ではほとんどやるところがありません。
銅をかけて、それをさらに磨いてクロームメッキだと、濡れたように滑らかにクロームの表面が仕上がる。
メッキには電圧をかけるわけですが、その時、スチールの中の炭素が水素に引っ張り出されてしまいます。引っ張り出された炭素は水素とくっついて水になる。
クロモリと生鉄と何が違うか?というと炭素の含有量が違うわけで、炭素を含んでもろくなったのをおぎなうために、粘りを出すモリブデンなどを足してクロモリが出来ている。
だいたいクロームメッキをかけると1割ぐらい強度が落ちることが知られている。
なので、英国のウィリアムスのクランクなどは新品時にギリギリの安全度まで落としてあるので、再メッキすると乗っているうちに曲がってきたりする。
フレームなどはピットが出てからあわてて再・再メッキをステンレス流し用のハンダを盛ったり、はなはだしい場合は穴が開いてしまったりしたものをロウで埋めてやりなおしているものがあるので、私はそういうものには安心して乗れない。実態は丸めたアルミホイルのようになっているはず。
一番重要なのは乗り味なわけですから、汚いまま磨きこんで貫禄を付けるのが正解だと私は考えている。