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Channel: 英国式自転車生活
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両端の狭窄

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「まあ、天善さま。そのような御召し物でいらっしゃるとは珍しいこともあるもの。変装か、斬り合いでもございましたのか?」
「いや。単に鍛冶場から着替えず直行してきたのじゃ。」
「火事場?火を消すのに奔走されていたのでございますか?」
「かじはかじでも鍛冶屋の鍛冶。馬力をかけぬといかんのでな。」

「景気がよろしいようではございませぬか。」
「そんなことはない。ただ忙しいだけだ。ここ6年ほども一度も欧羅巴へ戻っておらぬ。景気のよいのは便座屋ぐらいであろう。」
「べ、便座屋でございますか(笑)???」
「便座と炊飯えれきてる米櫃は大人気らしい。清国の者たちがいまは新年でたくさん来ておるのでな。あと彼の地は空気が悪いのでのどの薬、麒麟散も飛ぶように売れていると聞く。」

「うちはあまりパッといたしませぬ。」
「どこもそうであろう。本来、この國は内需を強くせねばいかぬはずだが、そう言う視点は幕府にはない。いま、世界はいくつかの大きい塊に別れて行きつつあるが、これからは対立と紛争が増えるであろう。この國ももはや安泰ではない。ちから関係も変わりつつあるのだが、どうも老中らにそういう認識はないようだ。」
「力関係でございますか?」
「たとえば、いくつかの島のことで周囲の國ともめているが、あれの背景は、この國の國力が大震災以降落ちたというのを見て、潮目が変わったとふんでのことであろう。しかも幕府の御政道はまったく無能であることが露呈してしまった。一方の病米理科國は苛苦・支離亜での失敗で、もはや国内の世論もはるか離れた地での紛争に介入してゆく気配ではない。そこで、島がとれれば、世界にもはや日のもとの国は大国にあらず、我らこそ経済の中心である、という『ちからの移った様子』を世界にしろしめすことが出来る絶好の機会と考えてのことであると余は考える。そして、それで病米理科が手を貸さなければ、日本と彼らの間にくさびを打ち込み、太平洋での覇権を握れるとの考えであろう。」

「そういう視点ははじめてでございます。瓦版ではわかりませぬ。」
「病米理科の対外政策で、彼の國がかなりの悪をなしたのはもはや周知のことなわけだが、そこへ、それを幇助する日本ということで、組みにして世界的に弱めたいというのが狙いだろう。

だとするならば、もっと徹底した弁論でイメージを作り上げて対抗してゆかなければならないはずだ。

病米理科は撤退して、みずからの大陸にこもることができるが、日本はここから撤退することは出来ない。ならば、内需を刺激し、海外へ市場を求めてうごめいて出て行くことこそ、厳重に慎まねばらないはずではないのか?海外へ積極的にでて、そこでの外需で成長しようといつもしてきた隣国が定期的に国際金貸しの世話になっているは周知の事実。貧富の差も拡大して、国内の需要は増えない。あの大財閥も毛利の屋敷跡の本店を売却するそうではないか。なぜ、そのような構造にこの國を近づけたいのか、老中の見識を疑う。」
「瓦版、万歳経済を読んでいるだけではなかなか見えてきませぬ。」

「環大海原商業圏などというのも、胴元たる病米理科が中心にいることをながらえるための策略にすぎぬ。この狭い國が独自のやりかたで、ほかの國と違う商品、商材を持ち続けるほか、生き延びる手立てはないはずだ。資源も燃料も外頼み、最近では学力すら落ちている中で、潜在市場も大きい資源も自国内で調達できる大国と同じ土俵に上がってかなうわけがないのではないか?合鴨農法や不耕起農法など病米理科や清國で出来るはずがないのだ。そういうものでこそ回してゆくべきだと思う。」
「わたくしも、なにやら、最近の御政道は、それに同調せぬ者はみんな『左巻き』とかで片付けようとする単細胞頭ぶりが気になって仕方がありませぬ。病米理科も清國も嫌いな立場もあって当然と思いますのに。」
「老中はこの國の底じからがどこにあるのか、ちからの源がどこにあるのか、まったくわかっていないのであろう。」

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