これはいったい身長がどのくらいなら『小さい自転車になるのか?』というと難しい問題なのですが、ひとつ言えることは、いま主流の700Cというのは、建築家のコルビジュエのモジュールの考え方から行くと、身長が170~175cmぐらいでもっとも自由が利く車輪寸法であると私は考えています。
それが証拠に、男子の平均身長がそれより高いオランダや北欧では700Cより直径の大きい28インチの数が多い。その下が26インチと650Bとなるわけですが、日本で1970年ごろまで26インチが主流だったのは理由のないことではない。
1960年代後半から1970年代初頭には『ジュニア車』というのがあって、それは495mmぐらいでした。これはもうダイヤモンド型フレームで作るとなると、ぎりぎりの大きさです。ラレーもそれで、アジア向けには26インチの車輪でフレームサイズ495mmとか505mmを作っていました。それより小さいのはやっていない。
なぜなら、それより小さい物ではヘッドチューブのところでダウンチューブとトップチューブがくっついてしまったり、ステアリングコラムのバテットがなくなってしまって強度が出ないからです。
うちのバルケッタでやって、ヘッドの問題はクリアできますが、シートの側はサイドプルを用いて最小470mmが限界です。それ以外はスローピングトップにするしかない。
そこで、ホイールサイズを650Bにすると、もう少し小さく出ます。ところが、こんどはブレーキが難しくなる。サイドプルで650Bがくわえられる製品は今のもので高級品がないのです。
ではカンテイにしたらどうか?そうすると、現行のカンテイレバーブレーキでは左右の台座が近くなりすぎて、調整しろがほとんどなくなってしまう。それを台座の溶接位置調整でクリアーしても、今度は振り分け金具のチドリの充分な上下移動量が確保できない。
うちは以前ブログで出した滑車の直付けで、510mmまでは成功しています。それに150mmのクランクを付けるとかなりかなり股下寸法がない人でも乗れる。ところが150mmでは短くて嫌だというひとがいるので困る。
滑車を使うように台座を溶接すると「A」の部分は短くできますが、「B」の部分はどうしようもない。
チドリの位置を下げると、今度は振り分けワイヤーが泥除けに当たります。
うちはそこで滑車もやめて、チューブの直付けでワイヤーを誘導し、490mmまで可能にした。ここまでで英国本社時代のラレーの限界より5mmフレームを小さくしている。しかもその当時(1965~1971年ぐらい)のラレーはスチールのサイドプルでしたから、ブレーキ性能はうちのほうが上です。
泥除けをあきらめ、タイヤを細くして、ブレーキをサイドプルにすれば490mmよりかなり小さいフレームサイズに作れる。ただし、まともな泥除けとツーリングキャリアは洒落た形状では付かない。
日曜日にいらした方はモーターサイクルのほうの設計も自転車の設計もやる。その彼もブレーキ処理の問題で頭を抱えている。
それより小さくするとなると、ハブまわりでブレーキをやるほかありません。
ひとつはディスクブレーキにすること。しかし、これはワイヤーで引くとなかなか上手く行かない。不具合が多い。フレームにも補強が必要になる。そうかといって今度は内部拡張式でやると、これは低速では良いのですが、或る速度域を超えると急激に利かなくなります。また長い下りで繰り返しかけると熱を持って利かなくなってくる。耐フェード性が非常に悪い。
まさか安物のバンド・ブレーキを付けるわけにゆかない。
それでは一気に24インチにすると、今度はタイヤのいいのがない、ギアリングのレシオの良いのがない、他の人の26インチ、700Cと長距離で互角に走れないという問題が出てきます。
写真のフレームはサイズが575mmですが、これぐらいだとかなり自由が利く。
そうかといって、サイズの小さいフレームの人にハンディを背負わせるわけにはゆかない。日夜そのあたりを考え続けているわけで、もう少し、部品メーカーが対応してくれないものかと思います。
一台はマイヨールのタンデム車用の内部拡張式ハブを用意しているのですが、2つ目がない。マキシカーのタンデム用などはハブだけで十万円超えますから。
いまの部品があまりに競技を向き過ぎている弊害はこういうところにも出ていると思う。
写真の「B」が泥除けを付けると500mmぐらいのサイズでほとんどなくなります。滑車を付けても、510mmより小さいとワイヤーを斜めに引くことになるので上手く行きません。