最近のカンティ台座は、シマノもカンパもテクトロもミスターコントロールも、同じ寸法の台座を使っていますが、それは60~70年代のマファックやCLBと同じ寸法でもあります。
そのマファック・クリテリウム、「きかない」という人が多い。
ひとつには、ブレーキシューが劣化していることもありますが、それをクールストップやXTRのシューに交換しても、それでも制動力には不満が残ります。また「鳴き」も大きい。
いまだに覚えているのは、1970年ごろのこと、横岳の日本ピラタス・ロープウエイから城の平の前を通り、IW山荘の前の直角カーブを左に曲がってプール平へ降りようとしていた時、スーパーチャンピオンのリムの真円度の低く、またつなぎ目の心材の重さから、激しい振動に揺すられてブレーキをかけました。
「ぷわ~~~~~~っ、ぶっきゅーーーーーーー」という、いままで聞いたことがないような恐ろしい異音がして、あわててブレーキをゆるめ、そうかと言ってスピードはかなり高い。「のらくろ」の看板が立っていた(今もありますかね?)あの直角カーブで、死ぬかと思ったことがありました。
その時は、何があったかわからず、自転車を降りてみると、リムに何かを塗ったように黒く融けたブレーキゴムが付いていました。
あとにも先にも、あれより速い速度でマファックのブレーキをかけたことはありません。
このマファック・クリテリウム、デビューは1947年と言われています。最初期のものは、左右の振り分けワイヤーが両方ナット式になって、ワイヤーに「たいこ」が付いていません。
その頃はブレーキ舟の形状が違っており、直付け台座の高さも違っておりました。これは、私が1947~1958年ごろのフランスの高級ハンドビルト自転車のフレームを数十台見て、すべてがそうでした。そして、この「高さがない台座」はあおられないのでブレーキが決して鳴かないのです。これは、私が1940年代のフランスの車両に乗った時の驚きでした。
ルネは60年代に入っても、「その過去を知って溶接位置を決めている」ふしが見られました。
まあ、しかし、それもいまや昔話。カンパのカンテイは、ふつうの背の高い台座のスチールフレームでも、全く鳴かず、利きもよい。私は、そういう点では過去に戻る気はしません。若手にも古物をすすめない。
参考資料として、フランスのハンドビルト車、「ル・フォーヌ」のフレームのクローズ・アップを載せておきます。