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Channel: 英国式自転車生活
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酒は世につれ

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酒は身体に入ってしまえば、あとは消えるだけですから、『味は脳の中にしか残らない』。実際、今のスコッチなど、40年前のものとかなり味が変わっています。グレンフィデイックなども昔のものを見つけて飲んでみると『別物だな~、美味いな~』と思います。逆に昔そこそこだったところが、今はまわりが地盤沈下したために美味く感じたりもする。

ところが日本酒はウイスキーほど長期間の保存に耐えませんから、『いま』美味く感じないといけない。酒屋の店先に杉玉がぶらさげられている理由でもあります。

昨年は日本酒流行りでして、友人の喫茶店へ行くと毎週末珍しい酒を誰かしら3本ばかり持って来て、飲み比べをやっていた。

もともと、何か珍しい食材が入ったりすると、それの料理を食べるのに、ワインだとか、食後の酒をもってゆくのが自然発生的に起こったのがはじまりでした。

私は以前、東京の英国人・アイルランド人連中と40人ばかり集まって、一晩にスコッチを40本以上開けて「ウイスキー・テイステイング・ナイト」などと言って飲み比べなどをやっていました。1ショットづつ飲んで、「あれをもう一回確認のため」とかいってもけっこうな酒量になる。

そんな縁からウイスキーやブランデーを持っていったことから、返礼で青森の人が日本酒のいいのを持ってきた。そこがはじまりでした。じつは私の祖父は酒好きで、ごはんは一膳弱しか食べず、『おかずと酒で生きている』感じでした。
「おじいちゃんはカブト虫みたいだ。甘い水だけで生きている。」
「ワハハ。」
その祖父は、
「ワシの仲間で酒だけ飲んでいた奴はみんな早死にした。酒を飲むときには何か食べないといけない。理由はわからんが、何か関係があるに違いない。」
よくそう言っていた。

その青森の人と年末食事に行った時、出くわし、二人でまた酒談義。彼とは会うと古武道と酒の話ばかりしている。そのなかで彼の言った一言でふと膝をたたいた。
「あれはR&Fさんは嫌いだと思いますよ。『いまどきの酒』の味ですよ。」
「つまり、薄っちょろくて、フルーテイーで爽やかで?(笑)こども向けにヒヨった味?」
「そうそう。うちの田舎なんかは雪が多いから、冬はすることなくて、漬物たべて飲んでばかりですからね。そういう場所でああいう飽きる味のものなんか誰も飲まないですよ。都会の連中が白ワインの延長で飲む別のものですよね。あれは。」
「やっぱり、酒はそういうところで、藩主なんかが酒好きで、自分が飲みたいがために密かに美味いものつくらせて、地方色ゆたかに完成度があがったものが旨いね。オレはやっぱり東北のと中部の山岳地帯から新潟へ抜けるあたりのが好きだな。滋賀がギリギリ境界線の気がする。京都の酒がピンとこないのは、お茶屋があって、芸子と飲んだりとか、そういう都合上京都のは女性的な仕上がりになっているんじゃないかな。同じ西のほうでも高知の酒は口にあうものな。」
「でも彼らも売れないと生き残れないから、どうしてもヒヨった方向の酒を出さざるおえないところがあるんだと思いますよ。」
「それだと、二十年後、三十年後に、フルーテイーなもんばかりが昔のラベルを貼って売られていたりして、世界にこれが日本酒だ、と言っても通じないんじゃないか。英国人なんか、みんな濃厚で辛口のモノが好きだね。ドイツ人もそうだ。」

年末はあちこちからけっこう個性豊かな日本酒をいただき、楽しめました。

備前徳利も飲み終わった後、数滴のしずくを表にぬってナデナデして、かなり育って顔色がよくなりました。ただ、『酒を美味くする備前徳利』は、生酒、あらばしりのたぐいは、みるみる発酵が備前のなかですすむ。「アッ!これはしぼりたての味が変わってもったいない。」と生酒は九谷の徳利にしました。

年末・年始の一言、徳利は二種類持つべし。

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