このあいだ仲間と会ったとき、彼が折り畳める車輌が欲しいというので、BSAのパラトルーパーのフレームを買ったと言う話をしていました。
「でも、あれはトップチューブについたウイングナットがズボンに引っかかるだろう?」
「そうなんですよ。あれがアレンボルトか何かにならないかと思っているんです。」
パラトルーパーの弱点のひとつです。
もうひとつのパラトルーパーの弱点は「トップチューブが上へふくらんでいる」ということで、これがしなった時にきれいにしなってくれない。これはフロントのホイールが小さい何かに乗り上げつつ、微振動が来る時、トップチューブがそれを「チューブの長い方向を使って押さえ込む」カタチなので、振動吸収のさいに不具合がある。これはバックフォークのシートステーを上へ膨らましても、同じようなことになり、「スチールの良いしなりを生かせない」設計となります。アレックスもトラスの上を一直線にせず、「く」の字にしたのは、何かそういう考えが働いたのだと思う。
亀の甲羅のように上がふくらんだフレームは振動系で不利で、ころがり抵抗が増える。
最近スチール・フレームの「しなり」や「しなやかさ」の功徳をいう人が「亀の子フレーム」を作っている不可解。
「振動系のことを考えたら、できるかぎり『つつかからない』フレーム形状を考えないといけない。
私はBATESを何台か日本へもってきましたが、すべて売ってしまった理由のひとつは、あのディアドラント・フォークの『つっかかる感じが好きになれなかった』ことがあります。
BATES(ベイツ)はそのために、きわめて癖のあるしない方をするため、高速の下りでは非常に怖い。ペンシルラインでコーナーを抜けてゆくことにものすごく気を使います。またその2重に曲げたフォークのために、高速でのブレーキングでフロントホイールがものすごく暴れる。
BATESは平地用だと私は思う。
いわゆる「変型フレーム」を見る場合、そのあたりを観察すると、その作り手の「理論の正当性」が良く見えると思います。単なる形の面白さだけなのか、本当に性能を考えてのことなのかがわかる。
これは私が書いておかないと、歴史に残らないと思いますが、アレックスはドイツの「テレレバー」のフロントサスペンションに一目置いていました。
「あれは理論的に考えてきわめてよい。よく思いついたもんじゃ。」
「では、フレクシターをヘッドで留めず、フレーム側からああいう風に長く伸ばしたらいいのでは?」
「まさか!あれは彼らが考えたもんじゃ。しかもドイツのもんじゃ。ワシは絶対やらんよ。」
これはなかなかエンジニアの意地が見える一言で私は感心しました。他人の発案に正当な評価をあたえ、一目おく。
いまはそういうスタンスで物を作る人は激減しているのかもしれません。