最初に英国へ行って、帰ってくるとき、日本人にありがちな行動ですが、高級紅茶セットを買って帰ってきました。
不思議なことに、英国ではそういうものを使っている人をほとんど見たことがありません。
カタログをもらってきて、出国前の品定め。ずいぶん悩みました。その時のカタログは、ずいぶんわかりやすかった。カップだけでなくほかの家具なども一緒に載っていたので、たいへんためになりました。
さて日本へそれがついてみると、出国最後の頃に買ったものだし、英国で使用風景を見かけなかったので、まったく英国の思い出になりませんでした。
ただ、その食器屋の主人がたいへん親切な紳士で、そのことだけがカップとポットの一式より思い出に残った。現在では見かけないような、ディッケンズの小説に出てきそうな人でした。
日本へ出荷前に手紙が来て、手入れの方法が手書きで書いてあって、「もったいなからと食器戸棚に飾っておくだけではカップも喜ばない。どんどん使ってやるのが食器のためだ」と言うような内容も書いてあった。
しかし、それからしばらくたって、「やっぱりあっちでよく見た安いカップやポットが懐かしいな」と思ったのでした。ところが、そういうものほど滅多に手に入らない。
パブで使っていたビールのジョッキとか、デンビーのブラウン・ポットとか、そういうものが懐かしい。
このところ、重ねられないからだと思うのですが、取っ手の付いたパブのバレル型のジョッキが減っている。あれもあるといいな、とも思うのですが、いまだにありません。
常に財布が軽いので、「私の思い出深い場所は安い」のかもしれません(笑)。
つい最近、やっとデンビーの珈琲ポットを手に入れました。2000円かそこいらのものですが、送料のほうが高く付く。しかし自分にとってはプライスレス。
そういえば、紅茶を飲む習慣が英国で広まり始めたとき、3本足のテーブル・トップが上へ跳ね上げられるティーテーブルが流行りました。これは完品はとてつもなく高い。とても買えないので、天板と3本足の部分だけが残っている、ボッキリ折れた壊れたものを買って、中心部分に鉄のボルトを貫通させ、欠けている部品を作り、木ネジの穴がズタズタに開いた天板の裏側には寄木細工のようにマホガニーを象嵌して、嵌めこんだ。それに色合わせをしてどこを修理したかわからないようにして、完成させました。
普段は畳んで壁につけて天板の木目を見て楽しむ。お客が来たときは天板をカチャッと倒して金具でワンタッチで固定できます。なぜかこういう家具は日本ではリプロすら作られないようです。日本向きだと思うんですが。
しかし、「デンビー好き」の私には良すぎました。今は手放してしまい、日本の古い喫茶店のテーブルを使っています。どうも私の場合「最高級品や良すぎるもののなかは居心地が悪い」。
「さりげなく、そこはかとなく、じわじわくるしあわせ」が好きです。