昔は町に眼鏡と時計の専門店があって、しっかり検眼、眼鏡を作るのはかなりな買い物だったと思います。同じく、腕時計を買うのも大きな買い物。
このあいだ友人が老眼鏡をつくってもらったと言っていました。
「なんだか老眼鏡って、どれかけてもそこそこ見える気がするじゃないですか。オヤジの老眼鏡とか使ってたんですが、ちゃんと検眼してもらってつくると、やっぱりずいぶん違いますね。」
いまや数百円からある老眼鏡。一方で、数万円の価格で作ってもらう老眼鏡。
自転車もなんだか同じような気がします。いわば、普通にあるのは800円ぐらいのプラスチックの老眼鏡。いっぽうで、ハンドビルとは、シッカリあわせたチタンフレームの老眼鏡。
私の場合、もう自分の28号は何もいうことがない。これで死ぬまで新調しなくてもよいくらい。
できれば、他の人のものも、できるかぎりその人に合わせていじるところがないようにして渡したいと思うのですが、そうすると、止まってしまうことが少なくないのです。
「自分の使っているサドルバッグだとタイヤに擦れる」という人がおりまして、バッグサポーターを頼まれて居りました。こういうのがけっこう手間。既製品ではどうしても大量生産くささが漂い、また全体の調和を乱します。問屋からすぐ買って、「はいどうぞ」と渡すわけにはゆきません。やはり自分で考えて作ったものでないと統一が取れない気がする。今回は二個まとまるまで製作をとめていました。1個だけを1~2時間かけて製作し、それだけを塗装するわけにいきません。午後の作業時間を太陽の光の状態の良い1時から5時までとしてそのほぼ半分を使うことになります。
「簡単なものを作ります」と請合ったものの、形状は簡単でもそれほど簡単ではありません。
形を考えて、材料をそろえ、曲げて、ロウ付けする。直角にこの角度で曲げ、しかも曲げたところどうしがここまで近いとそうやすやすとはカタチが出ません。ロウ付けも6箇所しないといけない。重量は140gでした。まずまずでしょう。
そういうことをやっていると、実際のところ、すべての車輌がフルオーダーになってしまう。
本日は、28号を作って欲しいと言う方とお話しましたが、体重が110kgを超えておられる。そうすると、フレームチューブの選定、ブレンドもすべてかえないといけません。設計も変わってきます。
なかなかどうして自転車製作は一筋縄ではゆきません。