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Channel: 英国式自転車生活
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古代ギリシャの青空

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どういうものだか、昔から古代ギリシャの美術が好きでした。またギリシャの神話も好きだった。

最初にヨーロッパに行ったときは、どちらかというと雲が垂れ込めた北ヨーロッパの空気が強かったのですが、夏を過ごすと、北ヨーロッパでも古代ギリシャの雰囲気を感じることができた気がします。

屈託なく明るい。開放的な天気。日曜日ともなれば無料になる博物館には、たくさん古代ギリシャの収蔵物がある。

そもそも、そうした石造建築は多く、古代ギリシャの様式で作られている。

日本でも丸の内界隈をあるけば、古代ギリシャ様式の建築がありますが、ギリシャの雰囲気や空気は感じられません。ただ、「西洋建築」という雰囲気がある。

英国は昔はローマ帝国がここまでやってきていましたから、ローマの雰囲気もあちこちに残っている。

おそらくローマ帝国が衰退したとき、英国に残ったローマ人も少なくなかったのでしょう。そのせいか、英国人は自転車でも自動車でも、ドイツ・フランス物が嫌いで、イタリア物が大好きです。

ローマはギリシャ文明の後継者ですから、ローマにもまだギリシャの香りがある。

フランク・パターソンのエッチング集をひらいて、地名を眺めてみると、「チェスター」という語尾の地名がけっこうあるのに気が付きます。チェスターというのは、古代ローマ軍のキャンプ地があったところなのです。これは「チェストラ」からきている。グランチェスター、マンチェスター、チェスターフィールドなどもみんなそうです。

古代ローマ時代からの名残はロンドンでもあります。有名なピカデリーは、正しい英語の発音は「ピッカデリー」ですが、あそこを歩くと、ゆるやかなスロープになって、すり鉢のような地形になっています。あれは「水たまり」=「ピッカデッラ」がなまったものなのです。

そういうところを自転車で徘徊する。グランチェスターには大きな池があるので、この水のために大きなキャンプ基地があったのでしょう。空を眺めて本を読んで見たりする。

2000年前に簡単にタイムスリップできる。パブへ入れば200年ぐらいのタイムスリップは容易。

夏にはそういう余暇の過ごし方をよくしていました。都心をみかぎって「ひのたまはちおうじ」エリアへ移り住んだのは、多摩川・淺川を軸にして、自然のなかで同じような自転車生活が出来るだろうと踏んでのことでした。

多摩丘陵は英国のデヴォンに似ている。白洲次郎がこのへんを選んだのも、私にはそういう理由に思える。

私も越してきて、ここで、喰うに困らず、死ぬまでマイペース自転車生活でいいかな?と。

しかし、ここ一年半の日本のありさまを見て、なんとも心中複雑。

社員が良くても経営陣がダメな潰れそうな会社に似ていると思う。

知っている自転車店もどんどん廃業したり、店主がなくなったり、写真館もなくなったり、個人商店もなくなり、古本屋も喫茶店も消え、あるのは「増殖する」チェーン展開する安物屋とフランチャイズ、コンビニと携帯電話屋。信じられないくらいの短期間に多くのコミュニティが消え、かわりに大規模均質文化があらわれてきている。

これはどこの自動車も同じように見え、計器版はガステーブルのようにねずみ色だったりするように、自転車もそうなってきている。それが都市の風景と自然へも侵食してきた感じです。

昨晩、旅行中の3人の友人に電話。そのうちの一人に言ったこと、
「日本中、どこへ逃げようとも、コンビニと携帯電話からは逃げられないぞ。(笑)」
じつは、そこにインターネットと加えるべきかもしれません。

なんだか、自分が限られた時間に、この世界に存在して生きているという実感をどんどん薄めるような社会変化がこの国では多い。実体と乖離したニュースを見て、なんだか「自分の精神、生きていることそれ自体がヴァーチャルなのではないか?」と思えるくらい、爪をかけている感じが薄い。

そういう現代日本で、自分をしっかりとこの時間と自然に結び付けてくれるもの、、、私にはそれは人とじかに会う事、それと自転車なのです。自動車もテレビもコレクションも、ほかのいかなるものも「虚しいもやもや感」を強めるだけのようです。

ただ、夏になると、どうにも「ヨーロッパの古代ギリシャの空」がなつかしくてなりません。

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