何年か前、或る店の店長が、『R&Fさんに自転車のことでお会いしたいという人がいるんですが』と言われた。
『ちょっと話を聞くだけで、検討しますと言葉を濁すだけでもいいです。』と言われた。
まあ、一応、話だけは聞いた。会話を重ねて行くと、お金のない人であることがわかりました。『できるだけ手持ちの部品を使って、、』というような話だった。そのショップの店長も脇できいていて、
『R&Fさん、あの人の注文は受けない方が良いと思いますよ。あまりにわかっていないもの。うちでもそういうことがたまにあるんですけど、こういう仕事と云うのは、どういう風に問題が起こり、手間がかかるか?そういう大変さまでわかって、はじめて、オーダーが成り立つわけじゃないですか。自分で出来ない人には絶対わからないところがありますからね。いくらいい仕事をしても理解されない場合が多いですよ。逆に文句を言われたりして。お呼びだてして申し訳なかったですが、ボクはこれは断ったほうが良いと思いますよ。』
そう言われて、それはもっともだ、とお断りした。
中古部品の移植というのは、なかなかうまくゆかない。中古部品を使う以上、『くたびれた中古車』に仕上がるわけですから。完全に新品時から調子が出て乗ってきた物ではないから、意外なことにつまづく。
先日も中古のホイールを使うものがあって、フレーム入れてみたのですが、ホイールのセンターが出ていなかった。これは『ほぼ素人さんが振れ取りしたホイールによくある』。振れをとっているうちに、どんどん寄ってきてしまう。たぶんセンターゲージを持っていない人の仕事。メーカー車のファジーなエンドでならボロがでないのですが、シャッキリしたフレーム入れるとおかしいことがわかる。まあ、これは直観ですが、フリーと反対側のワッシャーが、この変速段数にしてはずいぶん厚い。一回全部バラしてノギスで計るべきなんでしょうが、それで組み直して、スポークの伸びたのを交換すれば、それははてしないことになる。
ただでさえ、タイヤを外して、センターを出し、またタイヤを入れる作業が余分になる。それでもリムがさんざん乗った中古ですからクセも付きいびつ。新品を組むほどシャッキリ、すぐにできない。時間が余分にかかる。その分、金がもらえるわけではなし。タダ働きが増える。まあ、さんざん使った中古の部品はお金をもらっても触りたくない。その中古車、ワンオーナーではない。それも中古で入手。整備はまたお金のないほぼアマチュアの半プロに頼んだことがわかっている。
この35度超えの暑い中、お盆休みもなく、そういう他人の尻ぬぐい。やれやれな話です。