正直なところ、私はあまりサクラが好きではありません。いつも梅のほうが好ましいと思ってきた。夜の梅の香りのよいこと、咲いている上品な様子はサクラはかなわないと思う。
サクラの季節、ほかにも好きな花はたくさん咲いている。沈丁花、ぼけ、釣りがね草、水仙、みつまた、ホトケノザなどなど。
サクラもみんなが騒がない、しだれ桜などで美しいと思うのがある。
いつも通る道のわきに、実に良いしだれ桜が咲いている。じつはこのわきに手をあごにあてた、古い石仏がありました。このしだれ桜とよく合っていて、たぶん、昔の人はセットに考えていたのでしょう。
やがて、そこの前がコンビニになって、邪魔だと思ったのか、どこかへ移されてしまった。今は、そのコンビニも別の店になり消滅して、このしだれ桜だけが残っている。根元には鉄の錆びた角柱があり、やがては、この木の良さも評価しない人によって、斬られ、何かビルでも建つのかな?と思う。半跏思惟の石仏の後を追うように、この樹もやがてはなくなるのかな?と春にこの前を通るたびに思う。
この樹の前に石仏があったことを覚えている人も、もう、あまりいないのかもしれない。日本から風情と風景が消えて行くのは、だいたいこうした道筋をたどるようだ。
左端はボケの花。そろっていない、このファジーな感じが私は好き。