なんでも世の中では最新の変速器がまた出たようですが、私はほとんど関心がない。
なぜかというと、今の変速システムは『他社の製品と混ぜさせないインテグレーテッド・システムになっているので、変速器をどれかにチョイスすると、ハブも、フリーも、ブレーキ・レバーも、ホイールも、クランクも、ブレーキも、すべて『自動決定する』。
簡単に言えば、『変速器を選べば、自動的にすべてそこの製品でそろえることになる』。
ところが、変速器にしか関心がないのか、『自転車をトータルで眺めると、用途が極端に狭まる』。これは看破ニョーロですら『フラットバー用・エルゴ』で、どうにも使い物にならない中途半端なものを作ったことでわかる。
あの時、看破ニョーロは出楼座さまと組んで開発した。あの時、栗スチアーノが『まあ、見てていてくれ、すごいのが出来るぞ』と予告していたが、このブログで何回も書いている、人間工学的に誤った一文字ハンドルにネズミ色のオーバーサイズ・チューブのキャリアも付かないフレームという、3階級落ちのロードレーサーのような中途半端なもので、コンポーネンツ自体が立ち消えになった。
私が『ある意味クラシックに作っている』のは、別に古い物に見せようとしているわけではなく、古い部品の中に理にかなっているものがけっこう多くあり、また、製作してみると『自由度が大きい』からだ。
写真は1920年代のスチールクランクだが、ご覧のようにこれで、リアのハブ幅を120mmで作ると(写真のものは135mm)、最大5cm左右のペダルの間隔を狭く出来る。これは大変なことで、左右で5cmつめられるというのは、『てこの腕が短くなる』ことだから、同じクランク長、同じ脚力でも、フレームのウィップが激減する。しかも断面積が大きいアルミ合金のクランクでは弾性変形はほぼ無いに等しい。そこにチェンを正確にギアに誘導するために、『土管のように断面積の大きい高剛性フレーム』を組み合わせたら、膝や股関節への負担はものすごく増える。
私にとって重要なことは、『一生の間膝を悪くせず、自転車を楽しめること』であって、膝にくる硬いフレームに硬いクランクで、『変速段数の多さと確実なチェンジを楽しむ』というのは2の次、3の次なわけです。
『ペダリングのスキルがあるから膝は大丈夫』???そんなことはない。そう言っていた選手の本で、彼が膝の痛みに涙を浮かべ、撮影用のバンにつかまって撮影場所まで移動している写真がMOOKに出たではないか。
人間の脚というのは、骨盤から足首まで『Vの字』になっている。左右の足を40cm離して歩いてみればの歩きにくさがわかる。アシスト自転車に違和感を感じるのも、左右のペダル間隔が開いていることが大きい要因だろう。
自分用の旅行用車両は、このペダル間隔をギリギリまでつめてある。自分は30代、40代、ずっとそういう『間隔のつまった古い車両』に乗って来た。リアのハブ幅108mmとか、BBのシェル幅が52mmなどというのもあった。踏み心地がなんとも気持ちがよかった。
愛好者は、そういう方向へも、少しは興味の関心を広げてみるべきだと思う。