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Channel: 英国式自転車生活
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反時代的生産

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私の本来の仕事、、、それは『こういう風にやれば?』という方向性を与えることにつきる。ところが、どうも、それが出来ずに、まわりの足腰がついてこない観がある。

だいたい、試作のものというのはたいへんな手間と金額がかかる。軽自動車を既存のものを改造したショー用のモデルですらも、製作に数千万円かかるのが普通だ。

そうしたショーモデルは帳簿上の金額が莫大なうえ、しかも資産とみなされるので税金がかかる。だから、日本ではモーターショーに展示されたコンセプト・モデルなどが保存されることはまずない。

自転車も本来は、ハンドビルトをやっていたらとてつもなく時間とカネがかかる。

たとえば、ある人が、標準のタイヤが25~28Cのものを、『32C~35Cにしてくれ』と言ったとする。これは、タイヤのコーナーリング・フォースが違うのだから、フロントフォークのオフセットも、本来は変えるべき。ところが、フォークのオフセットだけを変えたら、ペダルと地上面のすきまが変わり、カーブでペダルをこすらないように、ハンガー下がりをいじることが必要になることがある。タイヤが太くなれば、今度はフォーククラウンの位置を上にあげないといけない。そうすると、ダウンチューブとヘッドチューブの交点を上にあげないといけない。

リアのフォークブリッジも上へあげる必要が出てくる。場合によっては、その幅では泥除けが付かない場合もあるので、その際、シートステーを『くの字』に曲げないといけない場合もある。

こういうことは、『現物でやってみないとわからない』ことが多い。だから、昔から『紙の上のスペックだけで考えるド素人さん』と『経験値から押してこず、頭で先走ったマニア』のオーダーメイドは失敗する場合が多い。

ラグレスの場合は、パイプの交点を曲線にカットし、パイプ同士がピッタリと吸い付くように合わせてロウ付けするわけだが、『交点の位置が変わるということは、このカットする曲線が変わる』ということだ。

そこまでのことを考えて、『要チェック箇所は何か所になるのか?』。

それらがすべて考え終わったとしよう。材料どりをして、適性な長さにカットし、接合部分を合わせ、下準備をする。リアキャリアの材料をカットし、曲げ、フレームが出来た時に、それに合わせてキャリアをロウ付けする。


それを今度はヤスリで仕上げる。たいへんな時間がかかる。

それで磨いて塗師に渡せるか?渡せません。ヘッドチューブやBBの端面をやり直し、ネジにはみ出したフラックスやロウを取り除き、仮組してみて、様子をみる。ステアリングコラムが偏芯していて、フォークのまわり方に癖のあるものやバックフォークがひずんでいるものなどは、この段階でつぶす。修正が出来るものは、この段階でもう一度手を入れる。

フォーククラウンの上に入るワンなどは、場合によっては旋盤を通していても入らない場合がある。最近の『日本印ヘッド小物』(たぶん実態は隣国製)はロットによってものすごくきつかったりする。これは適正な打ち込み力で入るようにしておかないと、塗装してからではフォークの塗装が滅茶苦茶になる。

この仮組だけで3時間は覚悟しないといけない。フォークコラムをカットしたら、金属粉がネジに詰まる。金属粉が入ったまま回転させると、固着してワンが回らなくなりますから。金属粉をよく落とし、ネジをさらう。ここで、クランクとBBの相性をチェックし、ハブも入れて、フリーも入れ、スプロケットとチェンステーのクリアランスをチェックし、チェンラインをチェックしたら6時間コースだ。

じゃんさんのブログで、ちばさんのところのフレームとクランクで、どうしてもスプロケットがクリアランス不足で苦戦している記事を読んだが、『シャフト長で調整すれば、表へだせば当たらなくなるが、チェンラインと前後ホイールの回転面が平行にならなければ、フレームのねじれ(ウィップ)が左右で異なりフレームに『踏み込んだ時、裏表が出来る』場合もある。『チェンは基本的に、ねじれていれば一直線になって最短になろう』としますから、これが大きければウィップも大きくなる。


私はそういう苦労は嫌なので、最初にすべて考えて決着をつける。良いクランク、高級ハブ、高級変速器でなくとも、すんなりと機能が発揮できる組み合わせが良いはずだ。それが『設計』というもののはずだが、多くの人は自転車を『フレームをもみの木とするクリスマス・ツリー』として扱っている。

これは、ホイールもそうで、たとえ計算式で計算して、スポークの長さを計算で出しても、実際に組んでみると『ああ、もう2mm短いのが欲しい』とか言う場合がある。計算で出るのは近似値ですから。

それがいつも同じハブ、同じリムならよいが、『どうしてもサンツアーの穴無しラージにしてくれ、とか、リムはどうしても、このブランドのこのグレードとか言うと、そのたびごとにスポークの長さは変わる。それで一回組んでみて、あと1mm長くとか、2mm短くとかいうことになれば、組んだものは中古スポークですから返品するわけに行かない。新規に注文する。3000円なにがしかに宅急便で送料の金がかかる。そういうことをやって、大のおとなが1日半以上費やして、チェンラインを決め、ホイールを組んで数千円なのか?私の『英語使いのエンジニアとしての国外での日当』を適用するとホイール組みで11万5千円ほどの技術料をもらわないと合わない(爆)。

だから、私がやっているような自転車は10年後には誰も作り手がいなくなるだろう。台湾製の長靴かぶせエンド、台湾クロモリ、完組みホイールにセットの変速セット。キャリアは『できあい』を工夫してつけて。

それでは、趣味性がないだろうから、こうしてやっている。

昔、古いツィードを仕立て直して古い自転車に乗ることを啓蒙する記事を今から22年ほど前,NC誌の通番382号に『レトロ・ファッション』という記事を出した。その時、『ツィードランなどというものは、ヨーロッパでさえ、影も形もなかった』。


同じころ、へチンズを紹介した。マニアすら『ヘッチンスってなに?』と言っていた。それがいまやファッション界で有名な人も集めるほどになった。

どうですかね。アップハンドルは『鵜―語』の息子のクリスチアーノに話したが、寒波と組んでフラットバーエルゴをMTBの延長線上で作って、みごとに外し、フラットバー用の製品自体が製造をやめた。私はあのとき『そんなものは役に立たない。形状設計が悪すぎる。これでは絶対に売れない』と一応説明した。彼らには『一文字ハンドルしか頭になかった』。

イタリアの連中は私の1937年製のBATES(ベイツ)のディアドラント・フォークをMOOKで見て、最新型に取り入れた。

一方で、アメリカでは『ものすごく重くて走らない28号』のようなコピーものも出て来ている。

ポンチョはどうか?2茶ん寝るで『R&Fのポンチョなんかいらないでしょう。500円のコンビニのレィンコートで充分』と書いている人がいた。あれから、どうですか、主婦や通勤者でポンチョを使う人は激増している。

ほぼ、すべて私の自転車界の未来予測は当たったのではないか?

10年前の自転車教祖たちの『今』を考えてみると良い。腰を痛め、首や頸椎を傷め、膝を壊し、乗れなくなっている人が多いのではないか?あるいは寝たきりや車椅子生活になったリーディング・フィギュアも多い。


私が作るのをやめたころに、たぶん、こういうのも流行る気がする(笑)。


しかし、ほんとうのところを言えば、私は28号の2世代先までのアイデアがすでに完熟している。まだまだ、残念ながらとりかかれません。

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