世の中には『抹香臭い』という言葉がありますが、日本のお香にはさまざまなタイプがある。私の祖母は書家だったので、私も頼まれて篆刻をやったり、旅先で紙を探して歩いた。
この歳になると何とも言えない懐かしさがある。だいたい書道用品の店は『和のよい香り』がしていた。
一方で、線香のあまり良くないもの(普及品)とか菊の花の香りはいけません。落ち着く独どころではない、我慢できないくらい嫌い。
墨の香りも良い。実に落ち着きます。
しかし、和の香りのものを自分で買うなどと言うことは、50歳ぐらいまでは絶無でした。それが親爺も深まって来ると悪くないと思うようになった。あるシブい演技で有名な俳優さんが、後期中年から神社仏閣めぐりにはまって、塗香をいつも携帯していて、神社やお寺に入る前につけていたといいます。それを見た若い実力派の女性歌手の方が、触発されてやはり塗香に凝り始めたという。
こればかりは文章で説明するわけにゆかないのですが、私は京都のある神社の神職の一族の方が作っている香袋の香りが好きで、京都に行くと良く買っていた。1000年ぐらいも同じ香りがその神社では使われているらしい。友人たちへのおみやげにするのですが、そこは通販とかは一切やっていないので、ちょうど具合が良い。
『あそこのお香に近い塗香がないかな?』と長らく探しておりました。私はスパイスが効いたような、カレー風や仁丹的な香りが好きではない。なかなかピッタリくるのがありません。
最近、書などを練習するようになって、どうしても、そういう和の香りの塗香が欲しくなった。写経や1行書を書く時、清めで塗香を手に付けるのが習わしでもある。
香合なども、いまの日本では使う人の絶対人口が減っているのでしょう。ネット・オークションでずいぶん安く売られている。送料込みで3000円もせずにずいぶん良いものが売りに出ている。『流行っていないものを安く楽しむ』(爆)というのをパターンにしている私としてはこれは素晴らしい分野だ(笑)。
香りが飛ばないように入れておくのに、銅のものを手に入れ、書を書くときにちょっと使うのに、イノシシのものを買った。私は最近悪者扱いされるイノシシとクマには深い同情心を持っているので。山の自然が壊されなければ、彼らも里に下りてこずに、人とは別の生息圏で平和に生きられただろうにと思う。そういうわけで、クマのものとイノシシのものはけっこう気にして見ている。
この延長線上はどうでしょうね?何をしている人かわからない、いよいよ怪しい感じが深まるのかもしれない。