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Channel: 英国式自転車生活
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立ち止まって考えると

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連休はお寺に行く用事があったのですが、タクシーの運転手さんとこんな会話をした。

「連休だけれど、みんな何を楽しみに生きているのかな?こういう建売とかあって、そのローンを返したり、自動車を持ったらそこでまた金が出て行き、毎月カードの支払いや携帯電話代、家のローン、クルマのローン、駐車場代、ありとあらゆるものを支払って、それの支払いのためにせっせと稼ぐという状況でしょう。その日々のサイクルの中で、廻っている金が大きければクルマが高級なものになったり、服が高級になったりするけれど、本質的なところでは豊かにもならないし、世の中全体が金と経済指標の工場みたいにせちがらくなるだけだよね。その隙間で旅行したり、食事に出かけたりするわけだけれど、健康を害したら、それも出来なくなり、チューブにつながれて病院のセメントの天井を眺めて終わりというのがほとんどなのではないのかな。」
「私もたまに考えますけど、どうにもならないですよね。なんのために働いているのかなって思いますよ。こういう仕事をしていると、乗せたお客さんの生活もわかりますけど、みんな同じですね。その食事とか持っているクルマや家はよくなっても、私なんかうらやましいと思わないです。」

その回っている『うず』が大きくなると、それを維持する努力も大きくなる。つまり始終追い立てられている。だから60年代~70年代の日本で、『つりをしているような浪人』が出てくる時代劇が流行ったのは、失われた生活を懐かしんでのことだろう。

自分の『こころは何で成り立っているのか?』というのは、実に興味深い。『情報でビッチリ』と言う人がけっこう増えている。私は密かにそう云う人を『情報脳の人』と呼んでいるのだが、しゃべることも情報だけで、その人自身の智慧や見識が感じられない。

情報とは誰かよその他人が流したことですから、情報を際限なく取り込んでいるということは、他人の頭の中の知っていることを、果てしなく自分の中に詰め込んでいるのに等しい。

これは自分を『砂浜の砂の一粒』のような存在にどんどん近づける。『情報過多』は自分を何ものでもない、つぎの誰かに情報を流すだけの存在にする。自分がどんどん『大群衆』にもまれるだけの分子のようになり、ある時、虚無感を感じるのではないか?

よく腕時計ヲタク、カメラヲタク、自転車の部品ヲタクが、夢からさめたかのごとき急激な無常感から、突然すべてを売却整理してしまうのも、『世の中で尊いとされているモノ』に自分がそれほど満たされていないという事実に目覚めるからだろうと私は思う。

私の友人がみまかった時、最後は素焼きの中に入っていましたが、そこに書かれた新たな名前は、彼の英国追及の人生とは何の関係もない、彼の人生の反映ですらない名前だった。私は覚えようという気にすらならなかった。

夕方は、メンデルスゾーンの曲をコンサートで聴きましたが、最近はその手の音楽が『きわめて時代遅れな論争形式の音楽』に聞こえる。日本でこういう曲を日本人が日本人のために演奏する意味があるのかな?とすら感じる。

これは『乗り物』などに関してもまったく同じことをよく感じる。

室町時代とか平安時代とかは、人口は今の10分の1ぐらいだったのではないかと言われている。それでも、当時の出来ているものをみると素晴らしいものが多い。いくら人口が増えてもろくでもないのが増えるのでは、むしろ増えないほうが良い(笑)。

かつては、人口が少なかったので、土地もあり、隠居・隠棲思いのまま。これから人口が減少に転じるなら、むしろそれは喜ばしいことではないのか?組織的に『金を儲けるためだけに作った建築物を減らして自然を回復させてゆけばよい』

若者には畑付きの家でも格安で住まわせ、3分の1は自分の畑などから、あとの3分の2を在宅で稼げる仕事にして、そこへローカル・コミュニティの面白いことでもはじめたらうまく帳尻が合うのではないか。すでにそういう生活をやってうまくいっている人もいる。

そこへモザイクのように年寄が混じって、若い世代への「ノウハウ・アーカイヴ」となるのが、かつては世界中どこでもそうであった形態だろう。

『情報中継脳の人』というのは、そういう時にほとんど重要ではなくなってしまう。そうした人の持っている情報はいくらでもネットでとれる。また、そこから出てくる考えも、月並みなもので、知恵と言うほどのものではない。

ところが、『スマホ』というのは、恐るべき速さで『情報中継脳の人』を量産するように思える。そこには、かなり深刻は疎外の問題も起きてくるように私には思えてならない。「自分とは何者か?」ということがどんどん見えなく、また手掛かりすらなくなってくるわけですから。ただのAIの基本情報の神経細胞のひとつに人間がなってしまう日が来るのかもしれない。

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