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Channel: 英国式自転車生活
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昔ながらという強み

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もう何年も1月1日は朝一番のお茶とお菓子、そのあとの朝昼兼用の雑煮というのが定番です。おせちは夜から。それもあまり食べない。自分で作ったクワイをつまんだりしながら日本酒を飲んでいることが多い。

前に一度おせちのセットを何万も出して注文しておいたら、クワイが3つしか入っていなくておおいに白けた。

記録によると、小布施に滞在していた時の葛飾北斎は、クワイはいくらでも食べたという。ほかのものはまったくいらないくらいクワイが好物だった。

私もクワイ3つで正月を乗り切れと言われてもとうてい無理な話だ。自分で煮て、好みの味にする。皮をむくのが手間なので、最近は隣国からの輸入も多いが、あれはシャリシャリしていて、別の物だと思う。

母親が手指の関節の変形がすすんでいるので、軽い丼を探していて、浄法寺塗りの椀に最近は入れ替えている。木地は古い骨董品の上に塗り重ねている。ものすごく軽い。保温性も良い。

なにぶんにも漆ですから、仕上げにはずいぶん時間がかかって、私も忘れていた頃に届けられた。軽いので、たいていの人はびっくりする。最近の練り物の木地やプラスチックの木地は絶対にこの軽さにならない。

よく枯れた古い木ならでは。

それほどのものなのに、大量生産の自転車のレース用リムぐらいの価格なので申し訳ない樹がする。前にも書きましたが、武田信玄は、家臣には合戦のあとで、頑張った者には黒漆の椀で、大活躍をして手柄を上げた者には朱塗りの椀で食事をとらせるように申し付けていた。その気になれば、誰でも朱塗りの椀が使える時代になったのに、思いのほか買う人はいない。結果、日本でも使われている漆の9割は輸入だという。

うちへ届いてから、漆特有の匂いがあり、1年間風にさらしておいた。気が付いた時に水洗いして乾燥しすぎないようにした。今年からまったく匂いがしない。こうして自分のものになってゆくところがまた楽しい。

30日の夜の買い出しで、パックのものを見るとひっくり返してラベルを読んでいたが、ま~ず、ソルビットとか酸味料とか、ありとあらゆる添加物が書いてあった。結局、クワイから黒豆まで自分でやった。

昔ながらと言えば、うちで頼んでいる江戸時代からやっている餅屋の焼いた様子を写真に撮ってみた。焼いている時の香りがまったく違う。こういっても電子炊飯器世代には理解されないと思うが、『最高に美味いきつね色のおこげに限りなく近い昔の餅の香り』なのです。

表面のテクスチュアも違うし、伸びてもこの程度。大きな差は、この状態で、持ち上げると皿からはがれる。だから高齢者でも安心だと私は考えている。

昔ながらのものというのは、何百年もかけてやってきて大丈夫だった実績がある。

正月ぐらいはすべて昔ながら、でやりたいといつも思う。

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